「価値観の多様化」時代への彼女達からの回答
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タイトルを見て、職人になった女性を取材したルポルタージュかな?といった印象を抱いたが、ちょっと違った。勿論そういう読み方をしても一向に構わない内容だが、「女職人になる」の“なる”の意味するところが、読んでみるとわかる。これは女職人になりませんかといわんばかりの、いわば職人版の「とらば〜ゆ」なのだ。こんな表現をすると叱られそうだが、しかし、この本に登場する「主人公」の彼女達は、学生時代から社会人の初期にかけて(多少幅があるが)「男女雇用機会均等法」施行、「とらば〜ゆ」創刊といった、女性の職業観が大きく変わった時代を通過してきている。そのほんの少し前まで、大学卒業後、女性はお茶組みやコピー取りを3年ほどやって寿退社、なんてのが日本のスタンダードだったはずだ。そしてその後、バブルは崩壊し、職業観のみならずライフスタイルや個人の嗜好に至るまで、価値観は多様化した。気づけば女性総合職も女社長も珍しくなくなった。この本に登場する彼女達はそんな時代の中で自分が本当にやりたいことを見つけて職業にしたのだ。混沌とした時代を、会社という小船にしがみついてなんとか凌いできたサラリーマンからすると、カッコよくて、ちょっと憧れる。これは学校の進路指導室に置いてもいい本かもしれない。だって業種別に「職人の成りかた」が解説されてるのだから。ココがこの本の最大の特徴とも言える。