映画界を目指す人は必見の傑作ドキュメンタリー
★★★★★
本作は「69」のメイキングでもナビゲートでもない。一本の映画を作り上げるまでの汗と涙のドキュメントである。もとは本編DVDに30分くらいのメイキングでも、と撮り始めたものには違いないが、あまりにたくさんのハプニングが相次ぎ、これなら長編になるぞ、と別売りにしたのだろう。世の中には「ナビゲート」なる奇怪なDVDが相次ぎ発売されており、簡単なメイキングとインタビューで来場を誘引する、いわば「金を払って観る予告編」が溢れているが、本作はそれらと同類ではない。東映の製作で、東映のメイキングDVDで監督への不信感を語るスタッフを映し出すものはあまり例がない。徹夜の連続で倒れそうなキャストとスタッフや大雨でにっちもさっちもいかなくなる現場、同時録音の可否で議論を戦わす主演俳優と監督、ダメ出しが続いて泣きそうなヒロインなどなど、まさにそこにいるような臨場感である。これを観ての感想は二つしかないだろう。「それでも映画を作りたい」か「映画は観るものに限る」かである。映画業界を目指しているならば、ぜひ本作を観てほしい。TVの現場とは明らかに違う世界が見られるから。