談合に変わるシステムとは?
★★★★☆
題名からすると、「談合」は悪くなくて改める必要はないというニュアンスを感じざるを得ないが、そうではなく「『談合』は本当に悪いのか。悪いとすればなぜなのか。これほどまでに日本で『談合』が行われてきた理由とは何なのか。『談合』をやめるとするなら、それに代わる新しいシステムとはどうあるべきか。」といったことを追究している。
思うに談合は根本的な問いかけがないままに、表層的な「談合バッシング」がエスカレートしているように思える。談合なくして品質の高いインフラ整備は不可能である。土木業界に競争原理を持ち込むと、予定価格ではなく、最低制限価格(ダンピングを防ぐために予定価格から一定の率で減額したもので、最近これが安易に下げられる傾向があるとのこと)に張り付き、結果として「悪貨」が「良貨」を駆逐し、劣悪な品質のものとなる。このような指摘は、著者自身が土木技術者で、しかも中小建設業の経営指導の経験に基づいているだけに、極めて説得力がある。筆者は、日本は欧米と違う協調社会で、完全自由競争方式が最善ではないという立脚点に基づく現状分析や、著者自身の留学経験に基づくエピソードの紹介等、建設産業の裏側を記述している。