談合の(経済)入門書としてグット
★★★★☆
■ 【独自の「話合い」システムである?】
日本の「談合」は、欧米の契約社会の「競争」とは別
の、独自の「話合い」で入札制度を円満解決する『日本
的調整システム』となっていること。但し、不況時にま
ずさが露呈するが、工事の質のチェックなどの制度的
な工夫を行うことで克服可能な(世界に有効な)システ
ムである。このような軸足に立ち著者が、「談合」をわ
かり易く解説しております。
■ 【御用商人⇒侠客⇒官民癒着】
本書は、大きく二部構成です。第二部「談合の事件史」
で従来の談合を振り返り、第一部「談合の政治経済
学」を展開しており、そこで談合の入札制度、その調整
の構図と官民癒着を描いております。はしがきにもあ
るように、本書が出版される前年の1993年に「金丸事
件」(官民癒着による入札談合事件による金丸信逮捕
事件)が世間を賑わし、本書出版の後押しをしていた
と思われます。
■ 【謝罪⇒寡黙⇒必要悪】
談合は繰り返される。関係官僚・大臣は、「内部調査
の結果、関与は無かった。」とし、一方、業界側は、
「メーカーの関与は無かった。」など談合行為・関与を
一切否定します。しかし、執拗に迫るマスコミには『自
由競争をやれば、多くの会社が潰れ、暴力団の介入を
許す。』と必要悪をうそぶく状況は、続いています。(談
合の歴史を見ると、そういう時代もあったようです。)
■ 【談合を考える入門書】
巻末にある本書の参考文献、凡そ75冊余りは、談合
に関わる文献として大いに役立ちます。又、本書は、
出版年が1994年なので、10年後の2006年からの「談
合課徴金減免制度」などが導入され、著者の言うゲー
ム理論の「因人のジレンマ」現象が現実のものになっ
ております。現在(2008年)から見ると最近の
記述に物足らなさを感じますが、経済的にわかりやす
く、詳細な考証など貴重な入門書となっております。
行政法的には間違いの記述のように見えるのですが。
★★★☆☆
同書では、明治憲法下、勅令は、法律と同等又は以上の効力があったとの記述があるようですが、勅令は、特殊なものを除いて、現在の政令とほぼ同様で、当然ながら法律より効力は下です。
また、同箇所で取り上げられた命令は勅令ではなく、閣令(現在の内閣府令に相当、省令と同格)で、勅令(政令)より更に下の命令です。
改訂版等で直っていないでしょうか。それともこれらは、著者の意図された記述なのでしょうか。
拙コメントと同書記述のいずれが正しいかは、各位に御判断をお任せします。
談合解説書として素晴らしい
★★★★☆
なぜ日本では談合が当たり前のように行われるか、の解説が非常に丁寧になされており勉強になる本。歴史解説も重厚。
論旨は「談合は国民経済的に怪しからん」という話ではなく、「なるほど談合にもそれに至る論理あり」という訳だが、それでも著者の結論は「したがって談合やむなし」ではなく、むしろ、「理屈はともかく、談合は様々の悪弊を生んでおり、やはり何とかせねばならん」ということのようだ。
だとすれば、経済学者なんだから何か処方箋の一つも書いて欲しいところだが、この本はまさに「システムの歴史と論理」に徹しており、提言などは書いていない。
カルい提言でまとめないところが重厚でいいという面もあるが、ここまでの分析をされた碩学の責任として、何か前向きな知恵を提示して欲しいものだ。冊を替えてでも。
談合は何故いけないか?
★★★★☆
公共工事等の競争入札において、入札に応じる複数事業者が協議して受注予定者や入札価格を決定することは、「不当な取引制限」として独占禁止法の規制対象となっています。従って、現在の日本では法に照らすと明らかに「談合は悪いこと」ではあるのですが、本書は単に談合の実行事例を掲げて「こういう悪いことをする事業者がいる」と断罪するのではなく、
1)土木・建築事業者を中心に、なぜ談合の慣行が定着したのか、
2)談合の慣行が成立していくプロセスはどういうものだったのか、
3)談合を行なうことによって事業者が排除しようとした「害悪」は何だったのか、
4)事業者が談合に参加してしまうインセンティブは何か、
5)談合に参加する事業者同志は「馴れ合い関係」なのか、それとも談合に参加する事業者間でもしのぎを削る「競争」は行なわれているのか、
など、談合慣行の実態に迫り、談合における受注予定者決定のプロセス、談合当事者の見地に立った「談合の経済的合理性」や、不当な競争制限行為を排除していこうとする公正取引委員会の姿勢についてまで、言及しています。
「こういう本が、やはり存在したのか」と私は率直に感嘆し、著者に密かな敬意を抱かざるを得ませんでした。
談合とは何かを詳しく知りたいかた、談合は何故いけないのかをじっくり考えてみたいかた、独占禁止法を詳しく勉強しているかたには、ぜひ本書を一読されることをお勧めします。
談合は「悪」なのだ!と大声だそう
★★★☆☆
とにかく談合は悪なのである、
競争が絶対的な善であるとまではいわないが談合が悪事であることはもっと大声で語られる必要がある、
著者の姿勢はその点では極めて不充分であろう、
わかりやすい例をあげる、
1990年前後にドミノ倒しのように崩壊して行った社会主義国家たちを思い出してみよう、最大の原因は彼らが錦の御旗として掲げた「計画経済」の失敗であることは論をまたない、計画経済こそ最高最大の「官製談合」なのであることを忘れてはなるまい、従って、繰り返された談合の必然的な帰結は「経済破綻」である、と述べても誰も反論できないだろう、
現在の我が国自身の巨大な債務に最も責任があるのが官製談合を筆頭とする”高コスト体質”ではないのだろうか? 80年代にはあれほど批判の対象だった英米経済が見事に復活できたのはまさに高コスト体質依存ではなかったからであろう、
一私企業が自社発注の自身の事業拡大のための事業で談合などしない(似た状況を招いていれば従業員の不祥事が行われていることになろう)、通常は競争原理が働き落ち付くところへ発注されることになるわけだから、
談合は関係する一部の者だけが幸福になるシステムであり、最低限の競争があってこそみんなが幸福になれることを忘れてならない、