良い本です。
★★★★☆
この本のウリとしては、
「ブラック=ショールズ・モデルによるオプション価格の計算」
を四則演算だけで計算してしまおうといういうものです。
四則演算だけといっても、
全く同じ計算ができるのではなく、
おおよその値が同じになるようなやり方です。
(実務では十分と考えられる範囲のようです)
一応、“ウリ”はそうなっているのですが、
読んでみた印象としては、
「デリバティブについてわかりやすく解説している本」
といった感じでした。
本の構成としては、
・リスクについて触れ、
ポートフォリオ理論について解説。
・デリバティブの説明。
(特にオプションについて)
・個人に関連する項目。
(外貨預金・住宅ローンなど)
・ここまで解説してきた内容の応用。
(国債、通貨オプションなど)
となっています。
最後に「おすすめ本」が紹介されているのですが、
ただタイトルを並べるのではなく、
どういった内容の本で、
どういった人にオススメなのかを
キチンと書いてくれています。
個人的には、
ブラック=ショールズ・モデルどうこうという部分よりも、
「第三章・個人のためのファイナンス講座」
が、趣味に合っていたようです。
説明も丁寧ですし、
なかなか良い本だったと思います。
デリバティブの基礎の本です
★★☆☆☆
べたほめのコメントが多いのですが、
自分で手計算でオプションの計算ができるようになるのはいいのですが、
それはこの本の数ページでそれ以外は、べつにこの本で目からウロコが落ちるような内容はなく、
いたって普通で、入門レベルの本です。
もう何冊かオプションの本を読んだことがある人なら、ほとんどは既に読んだことがある内容でしょう。
一応、フォローしておくと、この本を批判しているわけではなく、
私は、実用書に関しては、「なるべく客観的な評価」を心がけています。
題名が「金融工学の悪魔」だし、コメント欄もベタボメでしたので、
すごい秘密が書かれているのではと思う勘違いを、私はしてしまいました。
他の方も勘違いしないように、ということで、あえて、ほめていません。
入門レベルの本としては、読みやすい良い本だと思います。
金融工学の脱神話化
★★★★☆
「金融工学」は難解な高等数学の衣をまとうことで、実像とはかけ離れた怪物へと仕立てあげられている。著者はそうした風潮を破るべく、「金融工学」の脱神話化を試みる。
その試みのための武器がふるっている。高等数学に対して、小学生レベルの「算数」だ。実際に、四則演算のみでブラック・ショールズ式の近似解を出し、実践的にも、必ずしも高等数学は必要ないと説いている。
勘違いしてはならないが、この本は「金融工学」批判本ではない。末尾のレビュー集でも分かる通り、むしろ著者は内容を理解しないままやたらに「金融工学」を批判する論者に否定的である。著者の意図は単に、「金融工学」のありのままの姿を、高等数学という経路を通らずに理解させることだ。その啓蒙的意図は、多くの類書に比べてはるかに成功している。この本にそれ以上の高度な内容を求めるのはないものねだりというものだろう。
ただ一点、タイトルは著者の「脱神話化」の意図に反すると思われる。編集者の意向かも知れないが、『さおだけ屋〜』のような、もっとキャッチーなタイトルをつけていれば、もっと売れたのでは?
タイトルと内容がちぐはぐ
★★☆☆☆
1998年の金融危機後に書かれていますが、当時のパニックと、2008年現在の危機と、問題の根っこは同じだと改めて感じさせられました。その意味では内容は古くなっていません。金融の原点に立ち戻り、一般的な消費者や企業財務の担当者にとって、リスクヘッジ、オプション取引等は何を意味するのかを、できる限り平易に解説していきます。
残念なのは、金融工学の複雑怪奇さを暴きたてることと、オプション取引等の基本を解説することと、二つのベクトルがうまく連動しておらず、誰に向けてどういう目的で書いているのか、読者の顔が少し見えにくくなってしまっていること。結果として主題がつかみにくくなってしまっています。タイトルと内容がちぐはぐです。
ある程度金融工学の基礎知識がある人が、半歩くらい進むために、いったん金融工学の原点に立ち戻って、さまざまな金融商品(特に通貨オプション)の存在意義や使いかたを整理するためには、それなりに役に立つのではないでしょうか。そうでない人にはあまり必要なし。
巷の金儲けハウツー本と比較して清々しい
★★★★★
冒頭で「経済学は資産運用などで設けることが出来ないことを示す学問」と言い切っているところが、巷の金儲けハウツー本と比較して清々しい。これだけで読んでみようと言う気を起こさせる。
基本的なポートフォリオ理論についての説明が丁寧で、組み合わせによるリスクヘッジの考え方がよく分かる。またデリバディブの3タイプ「先物」「スワップ」「オプション」の説明も分かりやすい。個人的には株価変動を一般解として方程式で解を見いだそうとする経済学(金融工学)は無茶な気がしていた。天気予報のような物理現象の膨大な積み重ねに比べて、不特定多数の人為的な操作が含まれるからだ。実際に文中でも触れられるように、著者を始め、ノーベル賞級の学者を擁した投資会社であっても常勝とはいかず、安易な儲け話がないことが分かり、さもありなんと思った。
巻末に練習問題があるのも嬉しい。これを解いてみれば、文章として読んだその場で内容を理解出来ることと、解説されている意味が頭に入っていることの違いがよく分かる。(私はよく分かっておらず、補習、再読しました)
本書はオプションを組み併せたセット商品の危険性を警告するところで終わるが、続きは同著者の「金融広告を読め」に詳しい。こちらの方が実践的でよく分かり、確定拠出年金の対応に悩む一般人向けだと思われる。