インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

味覚の巨匠 エスコフィエ

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 白水社
Amazon.co.jpで確認
小説として退屈 ★★★☆☆
 本書はMichel Gall“Le Maitre des Saveurs”の翻訳、著者は雑誌“Marie Claire”の
副編集長などを歴任。
 無論、本書の主人公はフランス料理の革命家、オーギュスト・エスコフィエ。
 彼の父は火の使い手たる鍛冶屋、そんな生まれを紐解くにはじまり、料理人としての出世、
華々しき名士との交流、セザール・リッツとの出会い、オテル・リッツ、リッツ・カールトンの成功、
教本の出版など、この偉大なる《roi des cuisiniers》の生涯をめぐる伝記。

 なるほど確かに氏をめぐるエピソード集としては面白い。しかし、残念ながら小説としては
片手落ちと斬るほかない。
 例えば「料理にはほとんど情熱がわかな」かったはずのひとりの少年が、いつの間にか
レシピの暗唱を心がけるほどに料理にのめり込むこととなる。しかし、その隔たりを埋める
出来事は何もなく、ただ「料理にも、最初に想像していたよりずっと巧妙で秘密めいた面が
あるのだとわかってきた」との文章が差し挟まれるのみ。訳者は本書を「小説的」と賛辞するが、
こうした発見を具体的に文体で読ませる技巧を欠いて、何が「小説的」なのか。
 これに限らず全編がほぼこの調子なのである。
 文章をもって「衝撃を与え」ることを放棄して、露骨に「衝撃を与えた」と記し、その「衝撃」の
度合いに関してはほぼ読み手の想像力にお任せ、と言うのでは書き手の怠慢も甚だしい。
 種々の出来事がターニング・ポイントとしての意味づけも与えられぬまま、重層性も統一性も
持たぬまま、概ね年代順に列挙されるばかりでは、たとえそれらが単独のエピソードとしては
興味深いものであろうとも、物語としてはもはや成立していないと指摘せざるを得ない。
 翻訳もあまりよろしくはない。意味内容がもはや理解不能ということはないのだが、単語の
チョイスがなかなかに微妙。precieuseに「プレシューズ」とそのまま音を当てて、丁寧に
注釈を加えてみたり(文中に頻出するでもなく、重要語句でもないこれくらいの単語には、
訳語をざっくり当てなければきりがないだろう、と私などは思ってしまう。このような親切は
料理名や人名など固有名詞に対してより多く向けられるべきではなかっただろうか)、例えば
上顧客のprince of Walesを「ウェールズ皇太子」と訳してしまうのもいかがなものか。

 これがもし本書を原案としてドラマなり映画なりを製作するというのならば、それはいかようにも
楽しく仕上げることはできよう。あるいは、テキストとしても、読み手各人の果てなき空想力の
補足によって、またそうあるのかもしれない。そして、その逆もまた然りか。
 要するに素材としては悪くない、あとは料理人の腕次第、といったところだろうか。
小説として面白い ★★★★☆
 エスコフィエの生涯を題材にした本は、すでに何冊か出ていますが、この本は、読みすすむ手がとまらないほど、面白さで群をぬいています。
 登場人物が生き生きと描かれているので、まるで映像をみているように、情景を思い浮かべながらエスコフィエの人生を追うことができます。特に、パリのヴァンドーム広場にある、ホテルリッツの創設者セザール・リッツと出会ってから、お互いの優れた資質を引き出しあって当時の栄華を極めたホテルをつくりあげていくところは、圧巻の面白さがあります。
 また、各国の貴族や王様に、クロード・モネやエミール・ゾラ、サラ・ベルナールなど、有名な登場人物との会話も随所にでてきて、読んでいてとても楽しいです。そして、弱者につねに手をさしのべていた、エスコフィエの温かい人柄も十分伝わってきます。
 伝記というよりは、エスコフィエを主人公にした物語という感じなので、エスコフィエの記録的なことを詳しく知りたいならば、他の本も参考にしたほうがいいと思います。