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翻訳夜話 (文春新書)

価格: ¥799
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
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東京大学の柴田教室と翻訳学校の生徒、さらに6人の中堅翻訳家という、異なる聴衆(参加者)に向けて行った3回のフォーラムの記録。「夜話」とあるように、話の内容はいずれも肩の凝らない翻訳談義だが、レベルの異なった参加者との質疑応答の形をとっているために、回答内容は自ずから微妙に変奏されており、結果として入門、初級、中上級向けの3部構成の翻訳指南書に仕上がっている。

柴田が書いたあとがきに、「翻訳の神様から見れば、我々はすべてアマチュアなのだ」とあるように、両者の回答は、体系化された技術・翻訳論議に向かうのではなく、翻訳を行う際の、動機や心構えを説明することに費やされている。例えば「大事なのは偏見のある愛情」(村上)とか、「ひたすら主人の声に耳を澄ます」(柴田)とか、あるいは「(翻訳することによって、原文の世界に)主体的に参加したい」(村上)といった具合だ。

途中に、「海彦山彦」と題したカーヴァーとオースターの同一の小品(巻末に原文がある)の競訳が掲載されており、プロ翻訳家たちとの最後のフォーラムでは、これを巡った質疑が展開する。文脈や文体のうねりといった、一般論では語り尽くせない領域で具体的な論議が進行するこの部分からは、競訳ゲームのおもしろさという以上に、テキストと翻訳家との間で生じる本質的なスリルが伝わってきて、非常におもしろい。劇的な魅力たっぷりの、本書の白眉と言っていいだろう。(玉川達哉)

競訳と原文。これだけでも価値はあり。 ★★★★★
翻訳者による翻訳者のための本かと思っていたのですが、いい意味で期待を裏切られました。
英語にちょっとでも興味のある人は読む価値がある本だと思います。

著者二人と学生や翻訳者たちとのセッションも面白かったのですが、何と言ってもこの本の真価は、二人の競訳と原文が載っていることだと思います。

特にカーヴァーの英語は、それだけ読むと非常に簡潔な文章で、難しい単語も少ないので、結構すらすら読めてしまいます。
でも、「意味を取ることができる」からといって、翻訳が容易だといういうわけではないのだと、お二人の競訳を比べてみて納得。

今まで、翻訳物を読み漁って、「何か訳文がいまいち」とか言ってた自分が恥ずかしくなりました。
村上春樹氏がどこかのエッセイ(だったか)で「翻訳はあくまで近似値」とおっしゃっていましたが、なるほど。
翻訳者の方々が、我々読者に届けるために、日々外国語を日本語に置き換えている見えない苦労を実感できる一冊です。
お勧め。
愛情が大事だとわかった ★★★★★
翻訳は愛情があること。面白いことが大事だということが分った。
村上春樹の英語訳をした2人の性格の違う訳者についての見解でよくわかった。
厳密に訳そうとしても、大雑把に訳そうとしても、面白くできるかどうかが鍵なのだ。
しかも、中身に愛情があること。
柴田氏の説によれば、翻訳に3種類ある。原文のトーンに近い日本語のトーン。原文のトーンとは違うが日本語として一貫したトーン。
日本語としてトーンもリズムもないような訳文とのこと。
村上春樹を理解するための重要な資料 ★★★★★
「写真がカメラマンの立ち位置/表現意識を逆説的に示している」ように、翻訳について客観的に語られているように見えるその文言から、逆に著者の「特質」が<赤裸々に>語られているように見えます…個人的には「最もリアルな村上春樹」がそこにいるように感じられました。
一例を挙げると、よく語られている「小説を書き始める契機」の逸話について、個人的には「何も無い地点からの思い立ち」で書き始めたというストーリーに、皮膚感覚的に(ややもすると)しっくりと来ない点があったのですが、本書209頁のコメント「小説を書くようになる前に、趣味で翻訳をしていた」を知ると、前出の逸話が大変に納得できるものに感じられました…つまり「そうだ、(翻訳ではなく)自分で話を作ればイイんだよな、好きなように」と彼が自身の心の中で<はじけた>というのであれば(当方も編曲というのをやっていた手前)皮膚感覚的に理解ができるという風で…。
しかし上記の視点に限らず、一個の類い希なる表現者としての様々な思いが赤裸々に(フィルターを余り介さずに)語られている点においても、価値の高い本であると感じられますし、この現在に置いてこの語りに「勇気をもらう」方は大勢いるのではないでしょうか?
バランスのとれた楽しい対話 ★★★★★
村上 春樹氏、柴田 元幸氏の二人の対談を聞いているかのように楽しんで、読ませていただいた。翻訳の仕事は作品を愛することから始まるのだと実感。どの作品でも訳すことができるのではなくて、「自分」にあった作品に巡りあって楽しむことが「翻訳」の醍醐味かもしれない。

村上氏の「作家」としての作品の取り組み方と「翻訳」しているときでは、頭の異なる部分を使うという記述には納得した。バランスをとって仕事されているところには興味がある。
村上春樹が好きなわけ ★★★★★
 村上春樹の作品をなんとなく読んでしまう。ついつい読んでしまう。なんとなく心地がよいのである。どうしてなのか長年不思議に思っていた。その理由がこの本でわかった。彼は、翻訳するときにリズムを大切にしているという。なるほどリズムか。それは翻訳でなくとも、小説でも同じことに違いない。そのリズムに私は酔っていたのである。これだけのことだが、私にとっては星五つの素晴しい発見だった。あと、二人がそれぞれ好きな作家の翻訳を二人で試みており、訳がどのように違うか比較できるようになっている。結論から言うと、好きな作家を訳しているほうがやはり味わいがある。好きだということが、より深く作品を理解できるということなのか、より深く理解できるから好きなのか。まあ、どちらでもよいが、好きだということが、翻訳にも決定的に影響するということことがわかり、感動した。