丸いお腹、ずんぐりの手足、大きな耳に小さな目。どう見てもぬいぐるみのくまなのに、荷馬車に石炭を積み、家々の石炭置き場に「どかん、どかん」と入れ、代金をポケットに「1こ、2こ」と入れ、「ぱかぱか、ぱかぱか」と家に帰り、お茶を飲み、絵本を読み、ベビーベッドに入って眠る。なにも変わったことは起こらず、わくわくどきどきすることもない。ただきまじめに働き、ひっそり、たったひとりで暮らすくまさんのお話。平凡？地味？と大人は思うけれど、子どもたちは大好き。イギリスの田舎町、部屋や家具、生活の道具が細やかに描かれた絵もきれいだし、リズミカルな文章も心地よい。「くまさん、くまさん、キミはひとりでちゃんと暮らしているんだね」。そう言葉にはできなくても、けなげに生きる小さなものへのいとおしさを感じているんだろう、と思う。『せきたんやのくまさん』のほか、『パンやのくまさん』『ゆうびんやのくまさん』『うえきやのくまさん』の続編があり、そのどれでも、くさまんは毎日、同じように仕事をし、生活している。（平山イソラ）