ボニー・ジェイムスの音楽がアーバンなラジオ局とスムーズジャズのラジオ局の両方で流れ、『ソウルトレイン』音楽賞を獲得したのは全く不思議ではない。最初のアルバムからこれまで、ジェイムスの音楽はいつも、ファンキーソウルとライトポップを組み合わせたスムーズジャズの定番のサックス演奏だったが、今回のアルバムではそこに、はっきりと線が引かれた。ゴスペル色が濃いデイヴ・ホリスターがヴォーカルをつとめる「Something Inside」や、バス奏者マーカス・ミラーを迎えた「See What I'm Saying」を含む、ヒットしそうな曲を従えて、彼がレトロソウルなR&Bへ移ろうとしているのは明らかだ。人気のシンガー兼ラッパー、ジェイヘムとの競演では、コン・ファンク・シュンを含む70年代っぽいタイトル曲が少なくとも3曲はある。普通のスムーズジャズサクソホーン奏者はバスコンストルクションのコン・ファンク・シュンなんて知らないだろうが、それはジェームスの非凡さを証明する理由のひとつでもある。ジェイムスは2種類のタイプの聴衆をゆっくりと削り落としてゆき、その結果、彼にスターの地位だけでなく大ヒットももたらすファンが残った。このアルバムはその連続4枚目になるだろう。