サド伯爵の核爆弾
★★★★★
アメリカ軍はなぜ、日本に核爆弾を落としたんだろうか。この戦争はたぶん
ちょいとやりすぎのくらいじゃないと終わらないと思ったんじゃないかと思う。
そういうわけで、サド伯爵も、ほんとうにどうしようもない人間に彼の核爆弾、
いや、糞を投げつけたのだ。
ぼくらは、糞の味なんか知らないし、食べてみたら本当はおいしいかもしれない
じゃないか。これはヒューマニズムの本かもしれない、もしかしたら。
やっぱ、違うかも
ぜひご一読を!
★★★★★
私は澁澤龍彦の大ファンで、氏の作品(本書のような訳書も含め)はあらかた読みました。
ぜひタイトルや「サド」という名前に躊躇することなく、読んでほしいと思います。
・非常に読みやすいです。澁澤龍彦氏の訳の巧さが味わえます
・少しくどい哲学論議がありますが、この部分が本書の肝です。飛ばさないで読んで下さい
多くの人が思うほど、「大袈裟な」モノではないです。お気軽に読んでほしいと思います。
悪の限りを尽くすまでのジュリエットの成長
★★★★☆
物語として、大いに楽しめました。
何しろ、悪徳に向かっての成長過程を描いた小説はあまりありませんから。
ところどころにサドの「美徳と悪徳の哲学」が描かれており、それも興味深かったですが、個人的にはその内容には疑問があります。
でも、それを除いても、ジュリエットがどんどん悪徳の道に深く突き進んでいく様子は読んでいて痛快なものがあるし、ところところに登場する個性豊かな登場人物も、悪なりの魅力たっぷりで、飽きさせません。
私が好きなのは、アペニンの隠者ミンスキー(常に人肉を食べている)と、貴族という身分を捨てて世界へ武者修行に出かけ、大稼ぎしている盗賊になったブリザ・テスタの物語です。
この作品は、澁澤訳での完訳をぜひ読みたかったです。
ところどころ省略されているようなので。
これがシブサワだ!
★★★★★
かつて澁澤龍彦の著書を熱読した時期があった。そのなかでも「悪徳の栄え」はエポック・メーキングな作品だった。たしかにドストエフスキーやニーチェにも密かな影響をあたえた形跡が歴然としていた。延々と続く哲学問答と性的場面がめまいに似た感覚をもたらし、たぐいまれな書物の面白さの世界にのめりこませてくれた。登場人物たちの性格付けは少々機械的な感もあるが、ヒロイン、ジュリエットには十分悪の女王の魅惑がそなわっている。
興味深いのは、アペニンの人食い鬼ミンスキーのエピソードで、澁澤がもっとも好きな部分と言っているようなダークなファンタジーである。サン・フォンの悪の支配者哲学とともに私にとっても非常に好きなページである。
考えさせられます
★★★★☆
この作品を読むと、善とか悪という言葉がむなしくなります。
この作品には、善に対する救いがまったくありません。
でもなぜか不快にはなりません。
反対によくぞそこまで言った、という気分になります。
既存の善悪に辟易している人にはおすすめ。