ほのぼの・・・
★★★★☆
美大生×リーマン。9歳差の歳の差カプ。
事の流れで同居することになった二人ですが、
受・柚上は堅物であまり融通の利くタイプではなく、同居なんてとんでもない!といった感じ。
攻・片野坂はマイペースで大らか。過去の境遇もあって淋しがりやさん。なので同居は歓迎なご様子。
なんか、どう考えても合わなそうな・・・性格とか、生活とか・・・
でも、何ごとにも真面目でキチンとしないと気が済まない柚上が片野坂に恋しちゃったのは
違い過ぎる性格と、9歳も年下なのに大きく受け止めてくれる片野坂の優しさ、大らかさのせいなんでしょう。
ちょっとずつ堅物度が低くなって、普通に真面目な中に天然が見え隠れし出す変化が読んでて楽しかったです。
真面目過ぎてテンパリ気味な人なんで、片野坂のノホホン気味な・・でも芯のあるマイペースさが合ってた。
一見したところ相容れない二人でも同居してみると案外よかった・・みたいな(笑)
相容れないと思っていたのは柚上だけですけどもね(笑)
片野坂は、そんな柚上を可愛いと思うわけです。
人との繋がりを大切にする片野坂ですから、同居の切っ掛けが何にせよ、仲良くしたいと距離を縮めようとします。
柚上から勢いで投げつけられた言葉に深く傷つきつつも、柚上の心情に沿う形で同居をする優しい人。
真面目が過ぎて堅物な柚上を近くで見ているうちに彼のカラ回ってる心を察したのかもしれません。
そうじゃなきゃ好きになんてなりそうもない気がするんですけど・・・
いや、単に酔っぱらった柚上が可愛くて惚れたのか!?(笑)
このお話のポイントは信楽焼のタヌキです(笑) これは絶対外せません(笑)
タヌキに抱きついている柚上を想像すると可愛過ぎて・・・・
Hはそんなにねちっこく描写してありません。
あ、でも終盤のHは良かったなぁ・・・・片野坂がちょっぴり意地悪で素の柚上が可愛くて萌えでした!
「たぬき」が取り持つ恋
★★★★★
本を手にとってわくわくした気分でページをめくると、どしょっぱつにでっかい「たぬき」のイラスト。酒のとっくりを下げた、陶器屋の店先でよくみるあいつ。
BLなのに何で「たぬき」???
でも、そうなんです。これはまさしく「たぬき」が取り持つ恋のお話でした。
生真面目で不器用な年上の柚上と9歳も年下の素直で頼れる美大生の了。
ボケてるのかあざといのかわからない80歳の大家のおばあちゃんのせいで二重契約となってしまい、アパートの204号室で意に染まぬ同居を始める二人。
自分の気持ちをうまく伝えられない二人がすれ違いながらも「たぬき」の助けをかりて、徐々に素直になっていく過程が、ほのぼのとして、くすっと笑えて、とても素敵な恋物語となりました。
砂原作品の良さは…
★★★★★
実は砂原作品は最近出逢ったばかりでまだ数冊読んだばかりなのですが…。
この方の作品は好きです。内容は勿論面白いですが、何より構成、ストーリー展開に無理がない。作家さんによっては、かなり強引に話をもっていきがちな方も結構多いように感じます。だから時々イライラさせられることもある。こんな主人公の心の動きは有り得ないだろう!とか。何か自分のストーリー展開に固執する余り、人間心理や行動を無視して強引に話を作っていこうとする。例え必要部分を端折ってでも。そういう作品を読んでいると何故か無性にイライラさせられることが多いです。しかし砂原作品にはそれがない。本当に自然体で話が進んでいく。地に足が着いている感じがします。それぞれの登場人物の行動に納得がいくと言うのでしょうか。あ〜、この人ならこう考えたり動いたりするかも…、と言う風に納得してしまいます。でもこの納得感って結構大切だと思いますが…。それぞれの登場人物の行動にドキドキハラハラさせられても、不快感がない。それは話に無理がなく、自然体で流れていくからだと思います。BL作品は普通以上に、或意味奇抜感を狙っているような作品が多いように感じられます。それはそれで良いのですが、その余り作者の独り善がりが目に余る作品も多いように思われてなりません。やはり一文字ずつ一言ずつコツコツと、と言うのがあらゆる作品の基本ではないでしょうか。話の詰め方自体の方法論とでも言いましょうか?砂原作品はその基本が感じられます。そんな作家さんは意外と少ないです。今後の更なる御健筆をお祈り申し上げております。
叙情派エロ
★★★★★
描写が上手いとか、キャラが立っているとか、ストーリー展開が面白いとか、色んな特長の影に隠れてあまり言われませんが、
砂原作品のエッチシーンは、けっこう、かなり、すぐれていると思います。
BLのエロ描写には「濃い」「強烈」「激しい」などの形容詞がつきがちですが、砂原製エロは「しみじみ」なんですね。
心に染み入るいやらしさというか。一見地味に見えてあとからじわじわ来るエッチ、みたいな。叙情派エロ(?)
もちろん、ストーリーもとてもよかった。ワンパターンを避けながらも、BLの王道を外さない努力は毎回すごいと思います。
主人公カップルのどちらかが女性との結婚に絡む話はありがちですが、本作はひとひねりしてあります。
女の子がイヤな女じゃないのもいい。彼女も幸せになってほしいと自然に思えました。
この結婚のエピソードを基点に了の印象がぐるりと回転します。
天衣無縫な芸大生から「一人ぼっちで生きてきた青年」へと、鮮烈にイメージが切り替わるのが読んでいて気持ちよかった。
書き下ろしの、思い込みによる誤解とすれ違いという王道設定も、展開に無理がありません。
「いくらなんでもコミュニケーション能力低すぎでは!?」とつっこむ必要もなく、「こういうことってあるよね」と深くうなずいてしまいました。
信楽焼のタヌキがコミカルで温かい手触りをストーリーに与えて、いい味出してます。
次はユキヤのお話でしょうか。期待してます。