変容するアメリカ社会と戦争のあり方
★★★★★
元軍人のトミリージョーンズの息子は二人とも軍人。
もちろん父親にあこがれて。
その長男は軍の飛行機訓練で亡くなり、そして、次男もイラク戦争帰還後失踪。
父ちゃんは黙ってられないと、息子の失踪を追いかける。
そして、息子の失踪の真実が。
基本的にイラク戦争の異常さ、兵士としての戦争のストレスを主題とした本作品は、イラク戦争が、対日戦争のような英雄談ではなく、ベトナム戦争へと近づきつつあることを描いています。
国旗掲揚の方法も、英語も片言の新移民など、アメリカの変容していく社会も微妙に描く本作品はなかなか見応えがありました。
個人的には好きな作品です。
というわけで、このような評価と相成りました。
この映画は重過ぎ!
★★★☆☆
この映画は、1個人としての私にとっても、アメリカの傘の下にいる日本人を強く意識した私にとっても非常に重い映画でした。
重い秀作
★★★★★
謎解きの映画として見たらあっけない幕切れで、ポール・ハギスの意図としたものはそういうものではなく、じゃなんだと聞かれたら上手く言えない。見てもらうしかない。俳優さんたちが素晴らしく。トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン・・名優ばかりです。さらにFrances Fisher 意外な可愛らしさを発見。ここにイーストウッドの姿を垣間見た。ただ邦題はもっと練るべきだったと思う。原題が練られたものだけに残念。
父親の知らない息子の素顔
★★★★☆
知らぬ間に脱走し、死亡した息子・マイクの遺体が届く。父親・ハンクの元には明るい状況しか届いていなかったので、ハンクはショックを受ける。同時にその死に疑問を抱き、過去のコネを伝い調査を始める。やがて壊れた携帯からデーターを引き出すことに成功する。それはハンクの知らないマイクの残虐な面だった。
雑誌「PLAYBOY」2004年5月号に掲載された、マーク・ボールによる「死と不名誉」が原作。この記事は一人の帰還兵失踪事件の裏に隠されたイラク戦争の傷を暴いている。
華々しい栄光を散りばめた戦争映画は影を潜め、その残虐性を皮肉った映画が多く出回るようになったのは、世界が少し変わったからでしょうか?反戦を声高に叫んでも許される作品が生まれるようになるには多くの時間がかかったのでしょう。一人の人間、その心すらも変えてしまう、「戦争」。日本人であることに感謝する一時です。
あと、本当のことをいうと、シャーリーズ・セロンとか美人過ぎる人は、実は見分けがついていません。美人かつフィギュア体形の人は皆同じに見えてしまうのです。ごめんなさい。
価値観の変質
★★★★★
気がつけば、まわりを見渡せば、たしかにそのような人が増えている。その氷山の一角。
人間はどこへ行くのか。人間はかつて、どこにいたのか。その隙間にある段差。ずれ。ひとつだと思えていたものが崩れだしている現実をとらえた、誠実な映画。
題材に戦争を選んではいるけれど、戦場の経験が人間を狂わす、というよりも、
表面的には普通の人々、しかし内面的に、人としての基軸の欠けた、それでもなお、普通の人々の存在を、冷静に見つめた作品だと思います。
そのような人たちが戦争に参加すると、どうなるか。
戦争に参加しなくとも、そのような人たちはそれぞれの持ち場で、今日も普通に生活を営んでいるのです。
ぼくのまわりで。あなたのそばで。
他者との距離。仲間の意味。エゴとの関係。個人の壁。
これからの人間としてのありかたを、観るひとに問いかけてくる作品です。