古典だけでは終わらない。
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幼いことから能を習い(しかも免許皆伝まで持っていた)、能を血肉にしていた著者だからか、ほとんどの章で能の話が出てくる。小野小町では鸚鵡小町や卒塔婆小町、建礼門院では大原御幸というように。
しかしそれだけではない。
例えば、花山院の章では、彼の孤独と奇矯な振る舞い、その先にあった信仰に思いを巡らせ、東福門院の章では、後水尾院の陰に隠れた彼女の忍耐に思いを馳せている。
さらに、登場人物のゆかりの地を訪れることで、文書だけでは窺えない彼らの姿に迫っている。
古典そのものだけではなく、その背後にいる人間たちも扱った随筆である。
まず先入観を捨てて
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女性誌などで採り上げられる白洲正子は上流階級出身でおしゃれで奔放で、まさに憧れの女性の王道を歩む人なのですが、そこで毛嫌いしている人にこそこの本をお勧めします。
学者のように地道に、詩人のように感性豊かに、行商のように自分の足で掴み取った過去の事柄を、非常に分かりやすく読者に提供しています。今では「講談社文芸文庫」でも出ていますので、そちらの方が手に入り易いかも知れません。
おもしろかったです。
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白洲正子さんの人に対する観察眼がよく出ていて、彼女の感性がよくわかる作品でした。