成熟したゲッツの最上のプレイ
★★★★★
スタン・ゲッツのベストは何かというのはなかなか難しい。なぜなら初期から天才的なプレイを聴かせ、その後も何度ものスランプを乗り越え新たな実験を繰り返しながら弁証法的にスパイラル的上昇を続けてきたからである。50年代初頭の「ザ・サウンド」などに代表されるクールやウエスト・コーストシーンでの活躍、60年代初頭のボサノバ、68年頃のチック・コリアらを従えてのモーダルかつフュージョンの走りを予感させるサウンド。そして晩年の成熟した完成度の高い「アニヴァーサリー」や「ソウル・アイズ」などの諸作。どれをとっても重要であり音楽としての質は高く、優れている。しかしノーマークであった本アルバムを初めて聴いて度肝を抜かされた。3枚組みで別テイクを数多く含んでいるがこれほどサックスの音が良く鳴って臨場感あふれる録音とクリアーなリズムセクションに驚かされる。50年代半ばにこんなに凄い演奏を残していたことを知らなかったことをただただ恥じ入るのみだ。スタン・ゲッツの本当の凄さはこのアルバムで体感することが出来ると断言したい。リロイ・ビネガー、シェリー・マン、スタン・レビィ、ルー・レビィの出来もいいし、コンテ・カンドリーの参加もバリエーションを与える役割をしており西海岸のクール・ハード・バップとでもいえそうなフォーマットだ。ここには初期のか細さもボサノバ時代のやや鼻につくトーンも無縁だ。スタン・ゲッツの成熟した力強い艶っぽくクールなサックスはコルトレーンのサックスサウンドに染まりすぎた現在には一服の清涼剤以上の快感である。掛け値なし絶対持っていて損をしない最上のアルバムだと思う。
傑作
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ゲッツがどういうミュージシャンかを尋ねられたらおそらくこのCDをまっ先に紹介すると思う。一世を風靡した「west coast Jazz」あるいは「cool Jazz」というのがどういうものかがよく分かる。またそれ以上に、ジャズのアドリブがどういうものかを教えてくれる教科書的CDといってもよいのでは。1955年のインプロビゼーションに今でも鳥肌が立つのは驚き以外の何ものでもない。傑作。
初期の傑作,
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1955年録音だから、ゲッツがジャズシーンで活躍し始めた頃の傑作。プロデューサーは当然ノーマン・グランツだが、まだヴァーブ・レコードではなく「ノーグラン」レーベル。ゲッツはやはり天才的インプロヴァイザーというか、フレーズ、アドリブだけで一世を風靡した天才だ。その萌芽がこのレコードでも感じられる。サマータイムなどを聴くと、涙が出てくる。やはりゲッツは天才だ。