ケネディ暗殺における数々の謎を暗殺犯の主張に基づき解き明かしていく様は
非常に興味深い。
「死者からのメッセージ」であることを信じないとしても、
暗殺グループの行動についてはこの本に記述されているとおりだったと考えると
筋が通る部分もあるため、一概に非現実的と切り捨てられない内容を含んでいる。
著者の訳書である「ベスト・エヴィデンス」(彩流社)と重複する内容も多く、
ベスト・エヴィデンスの内容を犯人グループの視点で事件を追うとこのようになる、
といった見方もできる。
あえて本書の中で主犯の氏名は明かされていないが、本書に書かれた主犯の
経歴を元に突き止めることは容易なので、本書を読んだ人は是非探してみてほしい。
日本ともかかわりの深い人物である。従来の暗殺研究においては全く「容疑者」に
挙がっていない人物なので、少々驚かされる。
本書の残念な点は、死者からのメッセージという視点で記述されているため
その主張の妥当性を確認するのが困難であること。
検証するよりも信じるか信じないかといった観点になってしまう。
しかし、すべてが死者からのメッセージというわけではなく、
土田氏の暗殺研究の成果も盛り込まれているため、資料的価値はある。
例えば、「パレードルートの変更の謎」があっさりと明かされているのには感心した。
万人に薦められる本ではないが、ケネディ暗殺に興味があるのなら、
得るものがあるのではないかと思う。