エログロ短編と言ってしまえばそれでおしまいですが、それぞれ最後まで読んでください。「定番」唯川作品を期待するヒトには、向かないかもしれませんが、眉をひそめつつ背中がぞくっとする感じは、なかなかです。

眩暈とは、女の「念」。

短編の切れがよく、テンポよく読めると思います。
描写力に関しては、書き込みすぎてやや食傷気味。
ただ、題材・構成力が優れていて読ませます。
読後感は、「念」。の一文字が僕の脳裏に浮かびました。
そう、女の「念」について眩暈がするくらい描かれています。

いじらしい女ゴコロの深層には、「念」が流れている
ことをお忘れなく。。。

最後にホロリとさせる作品と
女の怖さを描いた作品とにクッキリ分かれています。
私はホロリ系の、猫の化身が現れる話と、
最後に初めて人のための盗みをする女の話が好きです。
唯川さんはジュニア小説を卒業されてから
とんと縁がなくなった感があったのですが、
久しぶりに楽しめました。
男の罪より「女同士の争い」が前面に出ている感じです。

グロテスクな表現が多くて読んでて吐き気がしてしまう作品もありました。
恐怖を感じるものの、どれも共感できる作品集です。
愛は時に人をこんなにも変えてしまう。
ホラーなんだけど、愛を感じてまう
そんな短編集です。

この短編集は作者の名前を伏せられていたら、まさか唯川氏の作品とは思えないほど、グロテスクでした。
女の情念といえばおどろおどろしいものと決まっていますが、こうした形でそれを表現するとは！面白いので、どんどん読めますが、食事前はやめたほうが良いかもしれません。