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小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか (中公新書)

価格: ¥861
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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ジャーナリストの本? ★☆☆☆☆
一言で言うと、小泉政権の政策に関する事実関係を、新聞などの一次資料より新書サイズにできるだけ詳細に詰め込んだだけという本。事実関係を再確認のために追うには、コンパクトで便利かもしれない。「ジャーナリスト」の書いた本であれば、ある意味良い出来だったのではと思う。分析の視点と水準は、今日の日本の政治学のレベルを暗示させるもの。大半を占めるempiri部分の分析は誰でも語れる程度のもの。最初と最後の章での学術的味付けは、十分な訓練の背景がないまま大きな概念を振り回しているよう。著者独自の概念、あるいは概念引用による文章の権威付けは、全体をスポイルする形になっている。真ん中の2〜4章だけ、事実整理に使うべし。このような本が、最高学府の学者によって書かれる時代になったとすると、かなり寂しい。
日本の政治をおおきくかえた小泉の 「アイディアの政治」 とは? ★★★☆☆
「パトスの首相」,「強い首相」 という観点から小泉元首相の政治手法を分析し,内政,外交をそれぞれ分析している.そのうえで日本の政治のながれを「利益の政治」 と 「アイディアの政治」 の対立という視座からとらえて,小泉が 「アイディアの政治」を復活させ,日本の政治をおおきくかえたとしている.しかし,「アイディアの政治」 の意味が十分説明されていないので中途半端になっている.

「あとがき」 で著者は過小評価していた小泉首相を 2005 年の総選挙以降,注目するようになったということを書いている.この選挙の結果として郵政民営化が実現したのは事実だが,それ以外ではむしろ徐々にちからをぬいていっていたように私は感じていたので,違和感があった.
小泉政権5年半の総括本 ★★★★★
5年半に及んだ小泉政権の政治を振り返り、その歴史的意味や従来の政治システムに与えた影響を分析、さらに小泉個人への評価も取り入れた好著です。新書ながら要点がよくまとまっていて非常に読みやすくなっているのは、著者の冷静かつ中立的な(どちらかといえば小泉に肯定的のように受け取りましたが)記述のおかげかと思います。特に小泉を論じる本には小泉個人の資質批判本や、逆に無条件礼賛本が多いですから、なおのこと好感がもてます。
本書では、小泉を「パトス=情念」の首相と定義し、本来の政治のあるべき姿である「ロゴス=理性」とは対極のパーソナリティや手法をとったと論じます。そして、在任期間中の業績(もちろん失点も)を俯瞰し、その功績と弊害について指摘します。
内山氏は、小泉政権は郵政民営化や経財諮問会議の活用など内政には戦略的な視点があった一方で、外交には戦略がなかったと断じます(そのとおり!)。しかし、それまでの官僚中心の政策決定、与党自民党のボトムアップ型政策決定から変革させた功績は、(小泉嫌いの私にとっては残念ではありますが)認めざるを得ません。そのことは、その後の安倍、福田政権が反面教師として証明してくれているようです。
また、本書のいいところは、とにかく読んでいて面白い、ということ。これは著者の筆力もありましょうが、小泉氏のパーソナリティに負うところが大きいということなのでしょう。政治学にとって格好の素材であることがよく分かります。
新書でこれだけのクオリティ。是非、オススメしたい一冊です。
“功罪”は何かを為したから ★★★☆☆
 正直に告白いたしますと、私は自民党は支持しませんでしたが、純ちゃんファンでありました。彼が何かをやってくれるという期待は余りありませんでしたが、私の目には彼がとても魅力的な指導者に映ったのです。本書を読みながら私は、なぜ私が彼のファンになったのか理解できたような気がしました。人々を「祭事」へと誘い、そこから自らの個人的信念の実現のための力を引き出す。その力に対する狡猾さに惚れたのです。首相、小泉純一郎に対する批判は多く耳にしますが、彼は事実人々を動かし、自らの考えを実行したことをもっと重視しなければなりません。ここが正論ばかり語るだけの政治家や信念を貫くだけの政治家達。つまりはそれらを為し得るための力を手に入れる狡猾さに欠ける政治家と大きく違うところだからです。本書の内容は、副題の示す如く小泉純一郎は何を変えたのか、という主題の追求にあります。彼は実際に何かを変えたのです。ここが最も重要です。本書は小泉政権の政策を大きく内政と外交に分け、それぞれの主題毎にその沿革を説明し、そこでどのような変化が生じたのか説く構成になっております。著者は比較的筋の通った内政と、行き当たりばったりな外交がなぜ生じたのかについて考察されておりますが、私にはこの点の議論は不毛のように思います。彼は自らの信念に対して忠実に行動し、それを実行しただけなのではないでしょうか。そこに何らかの理論的裏付けが見えるなら、それは恐らく偶然。小泉純一郎が日本の歴史の中で何らかの意義を持ち得るとしたら、その良否はどうあれ実際に行動し、変化をもたらした所にこそあるのではないでしょうか。そして、小泉純一郎はぼかし様のない明快な結果を残しました。日本の行く末を決めるのはそれに対してこれからどう反応するかにあります。しかし、将来小泉政権の評価がどう定まるにしろ、一手目を打った彼の功績は評価されてしかるべきだと思います。
小泉純一郎という政治家の素描 ★★★★☆
 5年5ヶ月君臨した小泉純一郎という政治家の分析と総括である。
 政治運営の仕方は「ボピュリスト。トップダウンの政策決定。非常に短期に物事を推し進めようとする。しがらみのない人間。」ということがわかる。
 内政では聖域なき構造改革で、新自由主義的政策を竹中と一緒に推し進めた。
 外交では強いアメリカを背景に、アジア外交、北朝鮮外交を推し進めた。
 大半は、こうした小泉の行動様式と実際の動きの記録である。無論その政治手法。改革のプロセス。戦略的な経済政策に比べた戦略なき外交の総括ともなる。
 注目は、小泉政権の功罪に関する評価である。
 ここに格差社会についても小泉がギデンスの言う排除の論理に立っていたことが示されている。これは、格差社会の犠牲者である下層や中間層の排除のみならず、上層の排除もポピュリズムによって行っていたことを明らかにしている。いっきに、悪役と見方に分けて、膠着した当時の政治システムを変革したことは大変評価される。
 しかし、小泉路線である新自由主義的改革はあまりにも結果を考えていない。セイフティーネットも忘れさられている。ここで、少数派の意見もみとめるギデンス包摂の論理が、より一段高い改革となることが示されている。