仏教西漸 の一端を観る
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大拙が、アメリカで行った三つの英語での講演記録とその邦訳。
英語で、仏教を語るには、仏教はもちろんのこと、英語の基盤となっているキリスト教や近代合理主義の基盤となっている西洋哲学への深い理解が無ければ不可能なことを教えてくれる一冊です。
何気なく使っている仏教用語、仏陀 如来、本願 菩薩 涅槃 など、英訳するには、そのままに直訳しても、西洋人には意味が通じない。その内容を示す、相同な英語を持ってこなければならない。仏教用語を、普通に使っている日本人こそが、その仏教用語を理解せずに、ほぼ慣習的に使っており、仏教を本当には理解できていないのではないか。したがって、英文で仏教書を読むことも重要だと分からせてくれる。
その上で、大乗仏教を西洋に英語で紹介するということは、東洋と西洋の両者の理解なくして不可能であったことがうかがえる。大拙の業績は、サンスクリットから中国語への仏典の翻訳をおこなった、 鳩摩羅什 や 西蔵法師 の業績 仏教東漸 に匹敵する 仏教西漸 ではないか とすら考えさせられる一冊である。