経済学宣言?
★★★★☆
クルーグマンと言えば空間経済学だが、それらの紹介として全くの初心者向けに書かれたものである。産業集積・産業クラスターの最新を織り交ぜて分かりやすく書いてある。宣言的な本と言ってよいだろう。
グローバル化について精緻な議論をしたい人にはオススメ
★★★★☆
新しい経済地理学の入門といって差し支えない。
一章では収穫逓増と生産要素の移動費をキモに、どのようにして中心・周辺構造が全国的な規模で内生的に現れるかを見る。米国では南北戦争から一次大戦までの間に起こったとしている。
二章ではマーシャルの古典的なアイデアである産業の地域集中化について語る。労働者市場の集中は各労働者にメリットがある。技術の波及が重要なのは何もハイテク企業に限った話ではないことを言って、締める。
三章では国境をどのように考えるかを語る。政策が財・生産要素の移動に影響を与えない限り国境を考える必要は無いのだ。比較優位・共通通貨の効果・ 幼稚「国家(not産業)」保護の議論について検討した後、カナダの事例を扱う。
グローバル化の本は枚挙に暇が無い。経済学の切れ味はそのフェアさにある。なぜなら、モデルの変数や置いている仮定のどこが変化すればどう結論に影響が出るかが明確であるからだ。そのあたりのことが気に食わない人は、ほかのファジーな説明をしている本のほうがいいのだろう。
脱国境は新しいのか?
★★☆☆☆
~インフレターゲット論の元祖の世界的経済学者の書いた本。私は経済学の専門家ではないが、日本や私の住む地域の経済が良くなってほしいと願っている。果たして国の経済が良くなれば私の住む地域の経済が良くなるのか、「良い」という定義も曖昧なまま、さまよっている。こんな偉い人が脱「国境」というのは、いま都市経済が勃興している中国や、通貨圏を形成~~したECの行く末が取りざたされる今、これは買い!と思って手に取ったはいいが、今、17年前に書かれた「都市の経済学」(ジェイン・ジェイコブス/廃刊)で指摘されている「脱国境」の理論に比べ、新しさを感じ得ない。いま、その本を同時に読んでいる私にとって軍配を上げるわけにいかない。ただ、実は両者はアプローチは違っ!ても、同じことを言っている~~のではないか、という考えも持ち始めている。ジェイコブスは参考文献にも載っているし。~
脱・国境、脱・たいくつな経済学
★★★★☆
クルーグマンは現在世界を代表する経済学者の1人となったが、彼の真の仕事は始ったばかりだ。この本は、複雑系の概念である「初期値に対する敏感性」や「経路依存性」さらに、今までの経済理論では解き得なかった、つまり無い物とされていた考え方を総動員するフィールドとしての経済地理を扱っている。既存の地理学・地勢学的考え方を超えて、ネットワーク論、都市論といった分野、国境を越えた企業活動に対し、極力数学を排した形で説明されているので、理論だらけの経済書にうんざりしている方や、これから経済学を勉強する学生には大きな興奮を与えてくれるだろう。