あっぱれ!マダム二人の歴史散歩
★★★★★
二人のマダムによる痛快エッセイ。その切り口は“歴史に学べ”と叫ぶジジイや会社人間達など足許にも及ばない。ターゲットは歴史上の人物や事件ではあるけれど、選ばれた対象が全て“偉人”とは限らない。仮に選ばれていたとしても“その実はこうだったかも………”或いは“(当の本人が内心では)アチャー、やっちゃったヨ”と感じていたかもと、まるで二人して煎餅でも食べながら日本茶を飲むような感じで日本の歴史を物語るのである。無論、それが推測ばかりというのではない。キチンとした根拠に基づいて話しているからオモシロイのである。 世の中に“サクセスストーリー”ばかりに目を奪われる“ジジイによる歴史本”が多いのは、それを書く人間が1つの組織の中で上から下を見下ろす形をとったり、周囲も“何々のカリスマ”と崇め奉るからであり、読む側にはそれをそのまま“役に立てよう”とする下心が見えるからである。そうすれば当然のように、彼らは自らが裸の王様であることも知らず、“紅旗征戎、我が意にあらず”との藤原定家の言葉など当然の如くに自らの耳目に入ることなどないだろう。歴史上の人物が“これは後の世になって役に立つ”などとして行った事跡などあり得ないことは明白であり“役に立つかどうか”はそれをどう解釈するか、どこにフォーカスを照射してそれを見るかによっても、時には180°全く正反対の像を結ぶことすら珍しくはない。答えは自らが出すモノだから、ジジイの書く“直ぐ役に立つ歴史本”に答を求めることは無意味である。二人の女傑(失礼!) はそうした右往左往する現代の男達の姿すら笑い飛ばしてしまう(想像すると、何故かお二人の姿に井原西鶴の肖像画が重なってしまう)。
尚、小説家が取材過程で入手したエピソードやこぼれ話と見る向きには、永井路子氏が鎌倉時代の史料“愚管抄”や“玉葉”に関しての研究では第一人者に匹敵することを紹介させていただく。
マダムの痛快歴史サロン
★★★★☆
知識不足でついていけない部分も多く、どこが独断でどこが史実なのかも
覚束ないていたらくの私でもかなり面白い。
「赤坂の迎賓館は…なまじベルサイユ風だからいけないの」
「定家。あの人はゴマすりでねえ」
「顕光というのはどうしようもない愚物。絶対悪霊になれる人じゃないの」
「建礼門院って人気あるのよ。われわれは全然買ってないけど」
「秀吉は三人の中で一番お嫁に行きたくない人ね」
「細川ガラシャはどう思う」「ガラシャ、怖い」
と、対談形式の文体が、奥様の茶話会に紛れこんだかのように優雅かつ痛快。
なおかつその知識は折り紙つき。
学生時代、日本史をこう教えてくれたらもっと頭に入っただろうにと思う。
歴史物の裏資料として二読、三読されたらよいのでは?
歴史好きはとにかく読むべし!
★★★★★
日本を代表する2大女流歴史小説家のお二人が、まさに「独断」で日本史をぶった切る
この作品はとにもかくにも面白いの一言に尽きる!。
歴史「小説」といえど、充分な時代考証の上に構成されていくが、この作品は
「充分な証拠はないんだけど私はこう思ってるんだよね〜」と言う推論が随所に
出てくるが、これがまた面白い。
特に「鎌倉時代」前夜の東国武士団の形成の考察は非常に納得感が高い
(それにしても義経は相変わらず、けちょんけちょんにされてますが^^;)他、
後醍醐帝の鎌倉幕府討伐の背景に寺社勢力の動きがあった、など、なかなか
面白いです。
ご両者がこれまで執筆してきた作品のエッセンスやその課程で入手した
知識をしかも面白く吸収できる作品に仕上がっていると思います。特に、
歴史好きの方は一読して、目から鱗を落としましょう♪。