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おすず―信太郎人情始末帖 (文春文庫)

価格: ¥302
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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人情物としても捕物帖としても面白い ★★★★☆
連作短編集ですが、どのお話も筋道や構図がしっかりしています。連作の捕物帖は人情話の方は良くても肝心の捕物話がいまひとつのことが多いのですが、人情話も捕物話も充実の内容です。主人公の信太郎は河原崎座という芝居小屋で仕事をしているので、芝居の裏話が充実しています。一方、信太郎と恋人のおぬいとの恋愛模様にはあまり紙面を割いていないので、「御宿かわせみ」のようなラブロマンスには欠けていて全体的にはちょっと硬い感じはありますが、江戸後期の時代小説ファンを裏切らない内容だと思います。
江戸文化が丁寧に描かれていて秀逸 ★★★★★
主人公の信太郎は大店の跡取息子。なのに吉原の茶屋の子連れの若後家とわりない仲になって内証勘当の身の上。結果的に捨ててしまった許婚は盗賊に犯され自害してしまう…

おすずとは自害した許婚の名前。自分を忘れてちゃんと嫁入りし幸せになってくれるものと思ってたのになぜ?…ということで、信太郎が真相究明に走ります。ここからはじまり。

大店の様子、町人の親子関係、長屋に住む幼馴染、吉原の風物など、江戸のあれこれが丁寧に詳細に描かれていて、時代小説読みによっては涎の出る作品です。おすずが最後に会った時に着ていた振袖の色は当世の流行り。角火鉢の猫板に酒の肴を乗せて晩酌。長屋のどぶ板が鳴る音、障子に映る陰…

文庫はまだ1冊ですが、シリーズは4作以上続いているので今後にも期待が大。これがシリーズ第一作です。