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水晶幻想/禽獣 (講談社文芸文庫)

価格: ¥1,103
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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美しい言葉の洪水に圧倒された。本物の文学はおそろしい。 ★★★☆☆
「伊豆の踊り子」発表後、大正末から昭和九年頃の、初期の短編集。川端康成といえば、ノーベル賞受賞から数年後のガス自殺のイメージが強いが、ここにあるのはそんな結末を予感させる作品ばかり。「発生学」の専門用語をカタカナで挿入したり、心霊学についての薀蓄を披露するなど、実験的な小説も多いが、自殺や死への、どうしようもない憧憬が随所に見られる。それが、繊細でこよなく美しい「日本語」によって、これでもかこれでもかと綴られているのだ。

また、「雪国」直前の作品である「散りぬるを」は、若い生娘二人がほとんど眠ったままで殺害される、という話だが、後年の異色作「眠れる美女」を彷彿とさせるところがあり、ぞくりとさせられた。幼くして家族全員を失い、生涯「孤児の感情」を捨てられなかったという川端の業を感じさせる力作ぞろい。いやあ、本物の文学はおそろしい。