本物の音楽家の才能が垣間見える
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北京五輪での演奏や最近では映画「のだめカンタービレ」での吹替演奏などで何かと話題に事欠かないが、間違いなく若手の筆頭株だろう。ホロヴィッツからの影響を隠しもせず、聴衆を激しく揺さぶる大仰なまでの演奏ぶりで悪評を買ったり、確かにちょっとハジケ過ぎな面は否めない。しかしホロヴィッツもそうであったように、音楽的貧困を塗り隠すためのパフォーマンスとは全く違う。彼の演奏をよく聴けば、音楽への純粋な思いや突出した才能は明らかだ。
本CDは、これまでの経歴で特に思い出深い曲をセレクトしたというもの。そのせいか非常に丁寧な、誠実な思い入れさえ感じさせる演奏になっており、意外にも正攻法な側面を見せている。特にモーツァルトとショパンは非常に美しく、出色の出来。さすがにボーナストラックはホロヴィッツばりのパフォーマンスを聴かせるが、ただ巧いだけの演奏では決してない。
生まれながらの音楽家だと感じさせるものがある。こういう人の演奏は良くも悪くも決して裏切られることがない。今後どう伸びてゆくのか、非常に楽しみな才能だ。