安藤、お疲れさま。
★★★★★
ここまで魂を揺さぶられ、目頭が熱くなった漫画は久しぶり。
安藤は、ちっぽけな存在だ。そう、僕らと大して変わらない1人の人間。ただ、"腹話術"というちょっとした能力を持っているだけ。
その"腹話術"はちっぽけな能力で、それでも安藤は"考える"ことで強大な敵に立ち向かってゆく。
もし、この安藤の能力が手から火が出るとか、触れただけで相手を死なせることができる能力だったならここまで感情移入したりはしない。
絶大なカリスマ性を持つ犬養だけではない。グラスホッパーという軍勢、正体不明の能力を持つマスターに、さらに殺し屋・蝉、鯨という明らかに安藤のレベルを超えた存在が周りに配置されているからか、安藤がよりちっぽけな存在に思える。
どう考えても敵わない。でも立ち向かう。
"腹話術"というちっぽけな能力と"考える"という短絡的かつ、最強の方法で。
単純な力では敵わない。だからこそ脳をフル回転させる。
そして安藤は進んでゆく。身体を傷だらけにしながら。
「世界だって変えられる」
超常の存在でない、僕らとさして変わらない安藤の言葉だからこそ魂に響く。
それは大須賀めぐみ先生の画力も手伝い、より伝わってくる。
主人公は最強じゃない、弱い。
でも弱い主人公だからこそ僕は安藤をやたらと応援したくなる。
その最後は清々しいほど。でも、やっぱり悲しすぎる。
兄の意思はちゃんと潤也に伝わっていると思う。
最後に。
安藤、お疲れさま。
消灯
★★★★★
この巻にて、第一章・安藤兄の物語が幕を閉じます。
彼は逃げませんでした。
涙を流し、震えながらも、真正面から対決していきました。
怖くてたまらない。安藤の恐怖はいつだってダイレクトに私達読者の中に流れ込んできます。
こちらの武器は「腹話術」と「思考力」だけ、しかし敵は規格外の武器を持った者ばかり。何よりも「大衆」ですね、あれは本当に怖い。
でも逃げなかったんです。たった一人なのに。周りは敵ばかりで、友人すらも豹変していく中で、彼は最後の戦いの地へ満身創痍で辿り着きました。
ここから先は、本当に、ただひたすら涙が出てきて、止まってはくれません。
安藤の物語の終幕に向けて、異様なほど入り乱れ、加速するストーリー。
そして、第63話「消灯」にて衝撃のクライマックス。
壮絶でありながらも、清々しく、爽やかさすら感じさせるような……まさに帯の通りですね。
おやすみ。
第二章・潤也編は作中の時間で半年の空白を経て始まります。
正直、第一章があまりにも素晴らしかったため、安藤の弟・潤也がこの物語を引き継いでいけるのか不安だったものです…。そのくらい、安藤は魅力的な主人公でしたから。
しかし、完全に杞憂で終わってしまいました。
失速するのではと思われた勢いはむしろ増すばかり。
ブレーキなんて存在しないようです、この漫画には。
そして潤也も変わっていくようです。ふいに狂気が垣間見える。
ハッピーエンドが見えません。
でもおもしろい。保証します。
それにしても、大須賀先生は本当にすごい方ですね。
物語の構成や絵だけではありません。コマ割りや文字の入れ方に、独特のセンスがあります。
本当に盛り上がる。そして本当に綺麗。このセンスあってこそのこのクライマックスでしょう。
どうぞ、安藤に泣いて、そして彼の弟を見守っていってあげてください。
構成うますぎる
★★★★★
コマ割りやらなにから色々良い意味でぶっ飛び始めた作者様
さらば安藤
★★★★★
原作は読んでいないだけに、この第一章ラストは衝撃でした。
腹話術という子供騙しのように思える能力だけを頼りに
必死に知恵と勇気を振り絞って戦った安藤・・・安らかに眠れ。
こんな好い兄貴が死んだら潤也も荒みますよ。
能天気な脇役→復讐に生きる主人公にランクアップも納得です。
しかし写真の中の家事にいそしむ笑顔のお兄さんは・・・、
何だか潤也が新婚ホヤホヤの時に突然、新妻を失った旦那に見えてくる。
ハードなストーリーの中に、こういうネタを盛り込む辺りも本作の魅力でしょうか。
最高です
★★★★★
伊坂さんのグラスホッパーのキャラクターが上手い具合にミックスされていて、必読です。