ダンサーになる人、アーティスト、母親になる人…
★★★★★
80歳で生まれ、仲間たちとはさよならを言う日々。少しずつ青年になっていき色々な経験をするベンジャミンの達成感たっぷりの表情には感情移入でき、楽しめました。子供になって行くベンジャミンは社会と乖離していき、永遠という言葉がとても似合わない身体になっていく。
しかし、彼女と彼の愛は永遠だったのですね。
共に老いていく素晴らしさの意味を知り、気付かされました。
色々な人生があり、人はこの世界で一人で生きている。
結婚しても、夫婦は人生を共に歩んで行けるとは限らない。過去と未来は繋がっていて、影響しあっているから。
ただ、様々な価値観を感じて自分を知り、人を知り、人は人を受け入れ愛すことができる。
永遠とは、自分の中で必死に作り上げるものだったのですね。
周りの人のエピソードも素敵で、特に彼女が自分を認めてダンスを教える側に立った時には、「ああ、この人はもうベンジャミンの全てを認めてあげるのだろうな」と思いました。
ただ、子供のこととなると、自分だけの問題ではなくなってしまうんですよね。社会の壁は厚く高い。
語り手が物語の最初と最後に集中して出演し、後半で語り手の真相を知る構成にはフォレスト・ガンプを思い出しましたが、展開の方向が少々違うところが観ていて面白かったです。
"社会"と"人間らしさ"が中和した作品だと思います。
退屈にして不快
★☆☆☆☆
厳しく書きますがこれが率直な意見です。 ブラピ主演でCMでも大々的に広告され、話のあらすじだけ聞くと大変インパクトがあります。しかし蓋を開けてみれば予想を遥かに下回る作品でした。 まず制作者は何故これほど不道徳を美化しているのでしょうか?売春宿での経験で金で欲しいものが手に入るなどと言う主人公、当然のように不倫をして(しかも何度も何度も)それが愛だと言わんばかりの描写。 これらがさも美しい愛と人生の一部のように描かれ周囲が許しているのは若返るという特異な設定故なのでしょうか?むしろその為にこの設定にしているのか?非常に腹立たしい限りです。 第二に話の作りもアメリカの歴史になぞらえて展開していく手法(フォレストガンプも同じことがいえるが)も日本人が感情移入するのは難しく、仮に私がアメリカ人だとしても歴史の変化になぞらえれば客を引きつけられるなんて浅はかな考え方に冷めてしまうだろう。そのため話の流れは淡々と面白みがない結果になってしまった。 数奇な人生なんていっているが、この映画の作りなら若返らなくても一人の普通の人間の人生を追っていけば済む話で、若返りの設定はだだの客引きにしかなっていない。 総評として得るものはなかったため星一つ。
老い、の幸福。
★★★★★
時間の経過と共に若返ってゆくベンジャミン・バトン。
映画を観るまでは、その意味がよく理解できていませんでした。
時間を逆行する物語というのは珍しくありませんが、リアリティーを起こさせにくい題材であろうと思います。
この作品は、この難しい題材を上手く料理してあったと思います。
老人が生まれる、ということがそもそも想像しにくいです。作り手は可能な限りの必然性を持たせて、主人公に奇妙な人生を歩ませたと思います。
ベンジャミンの人生を見つめることが、老いの問題を考えるきっかけを与えてくれていると思います。
若くなりたい、はある程度年齢がいった人が必ず口にする願望です。
しかし、この映画を見ると老いてゆくことが幸福に思えます。
友人や家族や時代そのものと同じ時間の中にいることがどれほど幸福なことか、感じます。
ベンジャミンは、誰とも時間を共有することができません。たった一人で生きていかねばならなかったのですね。
若いブラッド・ピットは、本当にきれい(?)です。
人生のバトンタッチ
★★★★☆
まずF・スコット・フィツジェラルドの短編小説のアイデアを借りて、3時間近くの重厚な作品に仕立て上げた事に敬服する。
その間、中だるみを感じさせる事無く見せる脚本は素晴らしいものである。
人生はすれ違いと偶然の連続である。
今、となりに座っている人の人生を僕は知らないし、隣同士だった事も意識しないだろう。
たとえば恋人のことを考えてみよう。
出会うまでの彼女の人生を話しとして聞けても、僕は共有することが出来ない。
別れたら話すら聞けないし、僕は彼女の人生に興味すら湧かない。
ただ共に過ごした時間は自分の人生に永遠に残る。
だからこそ出会って人生を共有する時間を大切にしたい。
人生の全てを知っているのは所詮自分しかいない事に気付かされる。
この映画は限りある命を送る生きとし生ける者への挽歌だと思う。
さて自分の人生を誰にバトンタッチ出来るだろうか。
人生を独り静かに考えたい。そんな時にいいかも知れない。
★★★★☆
観終わった時に思わず「ハアーッ・・・。」とため息が出ました。
切ないというか、しみじみというか・・・。
老いて生まれ、若返って行く主人公の目を通して、様々な人の人生を見せる。
極端に言ってしまうとそれだけです。
他の映画のように、スリルとアクション!とか、涙と感動!などのように、
観る者に何かを押し付けることをしません。
人生に関するセリフも出ては来ます。主演2人の間に「人生は素晴らしい。」と
書かれてもいます。
しかしこの映画は、観て「どう感じるか」も、人生を「どう生きるか」も、基本的に
全て観る人に委ねている。私はそう感じます。
辛いことや悲しいことにぶつかった時、ふと立ち止まってゆっくりと考える時間を
作ってくれる。そんな作品ではないでしょうか。