ハッキリ言って映画とは違う
★★★★☆
この文庫はベンジャミンバトンと他の合わせて7つの短編集である。
ここにのっているベンジャミンバトンは映画「ベンジャミンバトン 数奇な人生」とは
大幅に違う。
ネタばれ注意
一つめ 父がベンジャミンを捨てない
二つ目 映画では生まれたとき体は老人、心は赤ん坊だったが
この本のベンジャミンは心も老人からである
三つめ 映画は主に恋愛を中心にしてある
このほかにも違う点はいっぱいある。
まぁ映画が違うのだが
だから全く違うといっても過言ではない。
ただ一つの共通点は数奇で切ない人生であることだ。
また短編なので映画の方が逆に長いのである。
しかしコンセプトとして、小説版として
面白い部分は多々あるので読んでみるといいかも。
〈数奇な人生〉
★★★★★
フィツジェラルドの作品をはじめて読んだ。
表題作「ベンジャミン・バトン」について書く。
単なる私的な印象でしかないのか、ベンジャミンの母親の影が、非常に薄い。
冒頭から前面に登場するのは、父親ばかりだった気がする。父親は、生まれた子の心配ばかりで、妻の心配をしていない。怪しい。奇妙だ。母親の不在? 生まれた以上、母親はいる? 母はいるけれども、妻とは別人?
姿を現した時には、自分の父や祖父よりも年老い、年をとれば、自分の息子や孫よりも幼くなってしまう。――ベンジャミンは、彼の父と〈時〉という名の母との間に産み落とされた私生児だった。
煙草を吸うベンジャミンに注意する父親。姿は老人だから、喫煙しても問題ない気はする。戸籍上、法律上の、問題あり、というわけか。
若者ぶるな、と注意する息子。姿は若者なのだから、若者ぶるのではない。若さそのものを満喫しようとするのだが、戸籍上、ベンジャミンはいい年であり、問題があるらしい。
彼は自らの〈未来〉とともに姿を現し、〈過去〉の中へと消えていく。彼の肉体のなかだけは、〈時〉が逆行して流れていたのだ。まさに、――〈数奇な人生〉。
映画が楽しみです。
★★★★☆
映画公開前に、原作を知りたくて購入しました。フィッツジェラルドの短篇集で、表題作ベンジャミン・バトンの一生を、60ページ足らずで記しています。少し物足りなさを感じましたか、反対に3時間弱の映画はどのように表現されているのか、楽しみです。
フィツジェラルドの別の面
★★★★☆
フィツジェラルドと言えば、先ず「グレート・ギャツビー」と言う名が思い浮かぶのですが、この短編集はそれからすると、かなり趣を異にしています。
たまたま「ベンジャミン・バトン−数奇な人生−」の映画化を機に、今回この短編集が出版されたのでしょう。
ここに取り上げられているのは、
「ベンジャミン・バトン−数奇な人生−」
「レイモンドの謎」
「モコモコの朝」
「最後の美女」
「ダンス・パーティの惨劇」
「異邦人」
「家具工房の外で」の7作品で、
ジャンル的には、ミステリー、ファンタジー、SFぽいものなど様々ですが、ストーリー・テラーとしてエンターテイメントに徹したものです。
そうは言っても、その内容には「グレート・ギャツビー」の香りがしますし、夫婦或いは男女の微妙な関係を扱ったものも多くあります。
個人的には、「異邦人」の微妙なラストを含んだ夫婦を扱った物語が気に入りました。
ただ、やはり「グレート・ギャツビー」の圧倒的印象が強く、なかなか入り込めなかったのも事実です。
作者の別の面を見るのだと言う意志の元で読むべきかも知れません。