年上のあの女性(ひと)を忘れない
★★★★☆
雪が降る、東京・佃島渡船の上から物語は始まります。昭和三十年も終わりの頃。明治生まれの梶田は、佃島にある古本屋「ふたり書房」に入ります。ここは梶田が仕事をしていた場所。病身の母のため、大学行きを諦めた澄子が古本屋をしきることになったので、亡くなった親友のこともあり、店を預かってきた梶田が身を引くことになったのです。澄子は意地っ張りで、独りで店をやっていこうとしますが、古本のことを勉強していくうちに、梶田の力や存在がどれほどのものだったか知ることになっていきます。そして自分が古本屋の娘のくせに何も知らず、とても自分一人の力で商売をしていくことはできないということも。澄子は恥を忍んで梶田に再び店番を頼み、梶田のつてで古本の勉強をすることに。梶田は再び店!!番をしながら、若かった頃の自分のことを思い出します。あの年上の女性のことも。自分の生き方を貫いていく梶田と、梶田の親友ろくちゃんの生き方、そして若い澄子の生き方のコントラストが鮮やかです。