一本筋の通った職人の世界、そこから教えられる人生の難しさやおもしろさ、さらには大人の恋愛等、様々なことが職人の世界を舞台にして綴られている。
登場する職人達は主に呉服に家紋を描き入れる職人・紋章上絵師である。
著者の泡坂妻夫氏自身が紋章上絵師であるため、職人の世界の描写は物凄くリアルで、職人達の熱気が伝わってきた。
今現在、日本の衣食住はほとんど欧米化されています。それは一概に正しいとも間違っているとも言えません。ただ、そんな今だからこそ“失われゆく江戸情緒”を思い出すために、本書を読んでみるのもおもしろいと思います。
因みに、著者の泡坂妻夫氏は表題作『蔭桔梗』での直木賞受賞に際する記者会見で、なんとマジックを披露しました。そう、彼はマジシャンでもあったのです。こんな形の素敵な直木賞受賞に際する記者会見は最初で最後になるかもしれません。
ソレデハ…