また、アニメ映画版も観てみてくなるなぁ
★★★★☆
昔、アニメ映画版を観た記憶があったが、実は直木賞受賞作だった(第99回 直木賞受賞)。アニメの記憶が濃いのか、読む前までは、ずーっと少年のちょっとした冒険小説っぽい物かと思っていたが、だいぶ違っていた。
全体的には、二部構成で、前半がクーと洋平の出会い、そして愛情を育んでいく育成/成長物。前半部分は、クーやイルカのブルーとホワイトチップ、レトリーバーのクストーと交流、洋平の島での日常生活について描かれている。それぞれがとても愛らしく描かれており、読んでいてほのぼのする。
後半はクーとその一族を巡る、冒険/アクション物である。後半になると一気にアクション性が増す。そのギャップに少々戸惑うが、アイデア勝負な戦闘など、なかなか面白みがある。また、なぜ敵がクーを狙うのか、その辺も見どころのひとつ。なかなかスケールの大きい作品である。
また、アニメ映画版も観てみてくなるなぁ。
荘厳な冒険活劇
★★★★★
少年と動物が心を通わせあう荘厳な物語と海洋冒険活劇というエンターテイメント性を併せ持つ小説です。
COOという古代水棲恐竜が登場する物語でありながらも、その描写力の見事さで、実にリアリティーを備えた作品でした。
前半を読み終えたときには、COOのヌメヌメした肌の感触も、真っ黒な目も、仰向けに水の中に寝そべっている姿もはっきりと感じることができました。
主人公の洋助少年とイルカのブルー、ホワイトチップ、犬のクストー。彼らの仲間入りをしたクー。
フィジー、パゴパゴ島で暮らす人と動物の関係が愛おしく、いつの間にか彼らの幸福を祈っています。
それが突然打ち破られ、物語は、一気に大活劇に。
解説を書かれている田辺聖子さんが、直木賞選考の際、非常に紛糾した作品であると書かれています。
そして、COOに会いたい、とも。
1977年に日本の漁船がニューネッシーと呼ばれるようになった恐竜の屍骸のようなものを捕獲しました。
腐敗が激しかったため、海洋に投棄しましたが、その写真は報道されました。
この話が、作品のベースになっています。
読み終えて、心が晴れ晴れする素晴らしい作品です。
がんばれ、クーのお母さん!
★★★★★
父と共にフィジー諸島の小さな島に住む12歳の少年――小畑洋助が、プレシオザウルスの赤ん坊――クーを拾い、“母親”としてクーを育てていく物語。読了後しばらくの間は、青い海の風景とクーの姿が頭から離れません。
なんといっても、「母親の記憶がない少年が、手探りでクーの“母親”になろうとする」というシチュエーションが激しくツボでした。クーの食べる物すら分からない状態から、かいがいしく世話していく洋助にまず心奪われ、そんな洋助に懐いていくクーにも愛しさを覚えます。なんというか、この子らには「可愛いんだよ、お前ら!!」と言いたいです(笑)
中盤を過ぎると、クーを狙う悪党からクーを守りぬく展開になっていきます。この辺の描写は緊迫感があり、武装したプロに素人が勝てるのかという無粋なツッコミを挟む暇がありません。クーを守れて良かったと、痛快な気分を味わえると思います。
ラストも、しみじみと感動でき、「これで良かったんだ」と思える終わり方になっています。クーに幸あれ!!って感じでしょうか。巻末の解説の『それにしても、私も「クー」にあいたいな。「クー」は、あれからもうだいぶ、大きくなっただろうな』には、私も激しく共感しました(笑)
素直な話で非常に読み易く、内容も面白いので、動物ものが好きな方に超オススメです。
ファンタジー小説の傑作
★★★★★
恐竜と小年の交流が描かれたファンタジー小説です。
古代、海、生物、、、、作者の夢想感が溢れています。
子供のような嗜好・言動をする作者には好感をもてませんでしたが(モデルガン遊び・車・ギター・映画・小説・環境etc)、この小説の面白さは否定出来ません。
アクション(冒険)小説「虎口からの脱出」は、好みもあるとは思いますが、本作より面白いです。
青い海が心を満たす
★★★★☆
12歳の洋介少年と、海洋生物学者の父親とのパゴパゴ島での生活風景は、早朝からの電車通勤の時間を癒してくれる。イルカのブルーとホワイトチップ、そしてプレシオザウルスの赤ちゃんCOOが並んで泳ぐ姿が目に見えるようだ。特にCOOの飼育を始めた当時の父子の会話が私は好きだ。
核実験の計画により、島に異変が起きてからのスリリングな展開も迫力満点で、ファンタジーとSF的な要素が混在しているおもしろさがある。
この作品のよさを子どもたちに伝えたいが、小学生には難しい表現が多い。そういう方には、レンタルビデオのアニメ「遠い海から来たCOO」(VHS)がおすすめ。まだ、DVDにはなっていないようです。