あまりに単純すぎる
★★☆☆☆
家族八景とはいうものの、結局どの家族も同じように自己中で世間体を気にする孤独な屈折したタイプの人たちばかりで、色で例えるとみんなそろって冷たい灰色。一貫して「人間なんてララッラ、ラララ、ラ〜ラ〜」みたいな視点で、浅ましく愚かなうわべだけの薄っぺらい登場人物が描かれていて、そういうのが人間の心理の一部であるとしても、あまりに視点が一辺倒。反抗期の高校生じゃないんだから。
その種の人たちもいるんだろうけど、人間模様って灰色だけじゃなくて黒もあれば赤も黄色もあって、もっと色彩豊かじゃないのかなと。
デフォルメさせて書いただけのことかもしれないけど、それにしても灰色一色で単調すぎる。
人間心理、抉るならもっと抉ってほしかったし、どうせ心が読めるという設定なら同種の人間ばかりじゃなくもっと色んなタイプの人間心理を描いてほしかったし、……本から聞こえてくる「所詮人間こんなんっすよ。偉そうにしてたって、心の中で何考えてんだか」みたいなつぶやきに対して、「そうかもしれないけど、人間それだけじゃないと思うよ」って、何度も応答するのが途中で面倒になってきた。
面白いとは言えない本だった。
心象表現がいいです。
★★★★★
七瀬三部作の中で、やはり本作が最高のだと思います。
様々な家族の心の動きを短いイメージで表現する方法がとても新鮮です。
超能力者七瀬が見る心象風景の部分は意識も無意識もイメージも様々に出てきているので、自分自身の心を読む以上に深い視点で人の本音が語られています。
ですから、汚い部分も建前の部分も全て表出されているので、かなり強烈なインパクトを受けますが、自分の心の中でも起こっているようなことなので、少し安心できるのかも知れません。
自分に対する人の本音が聴けるというのは、よほど強い自我がなければ駄目だと思う反面、七瀬が美しくなっていく秘訣のような気がします。
七瀬シリーズでなくていいので、人の心がわかるという人の心象描画の作品を筒井さんにはもっと書いて欲しいと思います。
エロい人は注意
★★★★☆
まさに自分のナニを切り落としたくなるような作品ですね。
七瀬はテレパスのうえ美人なので、奉仕先のオヤジ、若者たちにたびたびエロい目で見られます。このときの男たちの思考がとてもリアルで、男なら一度は女の人に対して思ったことがあるようなことが書かれています。
とても人気のある作品だと聞いていましたが、話の内容はとても生々しく、たいていがエロ関係でねじれていきます。
男性なら絶対に自分の性欲がいやになると思いますよ。気をつけて。
人の醜悪さ、狂気、内面の汚さ
★★★★★
七瀬三部作の第一弾。
七瀬ふたたびが有名なので名前だけは知っていたのですが、
今回その世界に初めてふれました。
人の心を読めてしまう精神感応能力者七瀬が家政婦として
八つの家族の内面にふれる物語です。
三部作のなかでは一番評価が高く、
人の醜悪さ、狂気、内面の汚さが描かれています。
僕のなかでは、七瀬ふたたびの次に家族八景をお勧めしますね。
もし自分が同じ能力を持っていたらとしたら、
その醜悪さに耐えられなくなってしまうかと思いますよ。
七瀬の未来は・・・
★★★☆☆
人が何を考えているのかすべて分かってしまう不思議な能力を持つ七瀬。
彼女はこのことを他人に知られないように生きてきた。お手伝いさんとして
いろいろな家庭を転々とする日々の中で、彼女が経験したことは・・・?
8つの短編を収録。
仲がよい夫婦に見えるのに実際は・・・。真面目そうな人なのに心の中で
考えていることは・・・。他人の心の中がすべて分かってしまったら、
普通の人なら人間不信に陥るのではないだろうか。19歳の七瀬にとっても
過酷なことだと思う。だから、内容はもっとミステリアスで深刻な展開かと
思ったが、読んでみるとたてまえと本音が交錯する不思議な感じのする話
だった。七瀬は自分の能力を使い、人の本音を引き出そうとする。そのことが
その人の運命を左右し、時には不幸な結末を引き起こしてしまう。彼女の
行動がはたして正しいのか、疑問に感じる部分もあった。人は知らなければ
ならないこともたくさんあるが、知らなくていいこともそれと同じくらいあるのでは
ないだろうか。七瀬には希望が持てる未来があるのか?人としての幸せを
望むことができるのか?否定的な答えしか浮かばないのが悲しい。