難解
★★★☆☆
背景となっている東欧の地理・歴史に関する知識がないと,読み疲れる。
が,ドラマティックな展開は面白いし,「楽譜に込められた暗号」も面白い。
ただ,上巻レビューにあったが「性的描写」の必要性に疑問を抱いた。
ヴァイオリニストの「情熱的な」側面を描くために必須とも思えないし。
少なくとも,「モデルとされているヴァイオリニスト」のCDを聴いてこの本にたどり着いた私には,そのヴァイオリニストのイメージを歪めるものでしかない。(フィクションであったとしても)
愛と性とルーマニア革命と・・・
★★★★★
愛し合いながらもすれ違っていた二人が下巻でやっと結ばれるのであるが、その性描写は宇宙的とでも言うべきか。まさに高樹のぶ子は『愛と性の達人』なのだろう。
高樹のぶ子の作品では、『死』も欠かせないテーマの一つである。愛する人との死別はシチュエーションを変え、彼女の作品に多く描かれている。いつかは必ずやってくる『愛する人との死別』について、彼女はいつも考えているのだろう。そして、それをいかに乗り越えるかということも。
この作品はルーマニア革命についての歴史的知識や、音楽的知識が得られるほか、譜面の謎解きもあり、とても面白い。この作品の要となっているポルンベスクのバラードを是非聞いてみたいと思う。
ルーマニアについて知りたくなった
★★★★★
ルーマニアの作曲家ポルンベルクの楽譜に秘められたメッセージを解読した、日本人外交官と、バイオリニストは、いずれルーマニア革命を起す市民運動に巻き込まれていく。
「悲しみは100年続かないしかし、死は100年続く」そんなフレーズが心にのこった。
こういった歴史的な背景をモチーフにした作品を書くのは圧倒的に男性が多いが、高樹さんは冷静に歪曲することなく歴史を描きながら、様々な人間や恋愛模様を織り込んでいくその手腕はすごいと思った。
こんなに朝を待ってた本はなかった
★★★★★
この本は数年前朝日新聞に連載された高樹さんの本です。朝5時に新聞が来ると
すぐに飛び起き、まずここから読みました。約1年。
主人公のヒロインと相手の男性が魅力的だったこともあります。
しかしもともとのルーマニア、東側西側の崩壊、その他の情勢の後の
歴史的な史実も丹念に書かれてるばかりか、なんといっても「楽譜の
なぞ」これは音楽をやってる私には決定的に魅せられる原因でした。
なぞを解くためピアノを弾いたり、いろいろやりましたっけ。
楽譜に隠された暗号も、そしてヒロイン充子と真賀木さん(相手役)の
魅力。脇役ながらひじょうに魅力的でかわいらしい少女、ビエナの純粋さ、解ってながら辛かったヒーローの死。最期の結末も・・・
これがバイオリニスト天馬敦子さんの話から創作されたものと知り
実際哀愁のバラーダのCDを買ったり。はまってしまった本です。
ぜひ一読してください。