亡国の民主党政権、でも今の自民党では…
★★★★☆
いつもながらの中川節炸裂。中川さんの主張はどの著作も基本的に同じ、すなわち「保守主義こそが国家にとって唯一の正統な政治思想」。馴染んでいる読者には繰り返しになりますが、新見もあります。たとえば、漫画の神様手塚治虫が共産党員だったということ(47頁)など。
この本の主な主張は次のとおり
1 民主党政権下、日本は崩壊しつつある。本来なら、自民党が政権を奪取し保守思想によって、日本を復活させるべきだが、自民党の議員たちもはなはだ低レベルである。
2 日本は直ちに赤字財政健全化のために、超福祉政策をやめるべきである。具体的には、年金制度や「子ども手当て」の全廃、教育費国庫負担分の大幅削減、劣悪教官と劣悪学生しかいない国立大学の廃校(何と具体例までのっています)など(267頁)。
3 ケインズ経済学は「底知れぬ害毒」をもつ経済学であり、カルト宗教的な道徳破壊の運動だった(254頁)。
4 学ぶべき偉大な哲人、政治家は次の8人(351頁)。
コーク卿、エドマンド・バーク、アレクザンダー・ハミルトン、マンネルハイム元帥、ウィンストン・チャーチル、昭和天皇、ロナルド・レーガン、マーガレット・サッチャー
5 「真正保守」と「民族系」論客は90度異なる(359頁)。「民族系」は「保守主義者ではない上に「保守」であるか否かすら怪しい。人間として道徳的にも問題のある人物がほとんどである」そうです。ちなみに「真正保守」とは「昭和天皇、吉田茂、中川八洋、福田恒存、殖田俊吉、竹山道雄、磯田光一」、「民族系」とは「渡部昇一、松平永芳、小堀桂一郎、江藤淳、西尾幹二」、両者の中間が「林健太郎」と区分しています。
民主党を第2共産党と見抜き、自民党の下野を自らが左傾化した結果と証明する力作
★★★★☆
日本は滅びようとしている。それは、核を持って自立する方針を打ち出す議員が議席を取れないことから明確であると私は思っている。
本書はそんな私の漠然とした思いを遥かに超越し、日本が共産主義によって滅びようとしていることを知的に証明する第一級の真正保守のバイブルである。民主党に危惧を抱く方々には是非とも読んでいただきたい。民主党が良いと思っている方もタイトルに惑わされず読んでいただきたい。民主党が日本にもたらすのは大不況ではなく、日本人の絶滅と日本国の消滅である。
自民党はこれまで左傾化を進め、共産革命の準備という役割を終えたので、知らずに共産化した国民に用済みにされただけだという指摘には、頭をバールのような物で殴られるほどの衝撃を受けた。
男女共同参画社会基本法・少子化社会対策基本法・次世代育成支援対策推進法はルソーやレーニンが進めた親子の絆を断ち切り、子供を擬似孤児院で育てて全体主義に染めるための方策と全く同じであると断ずる。これらの法律に込められた意図は以下のようなものだと著者は言う。
・男女別姓による家庭を持たなくても良い雰囲気
・子供を産まなくても他人の子供が払う年金で老後を送る権利
・子供を産んだ女性がすぐに保育園に子供を預けて働くのが当然と思わせる環境
(これは子供は社会=保育園・孤児院で育てましょうという、孤児院育ちのレイプ魔ルソーの思想である。
レーニンによりソ連で実施されたが、極悪のスターリンでさえ社会の乱れに困惑して廃止したほどの悪法だ。)
・堕胎の自由により、今後生まれるであろう日本人を生まれる前に抹殺する、血を流さない日本民族洗浄
・人権思想の高まりにより、先祖や子孫はおろか同世代の死者にも配慮しない社会の成立
少子化【対策】基本法には既に少子化が前提であり、少子化を止める施策が何もない。次世代育成支援対策推進法には親子や母親・父親といった概念が削られていて、子供を次世代と言い換える無色の共産主義が隠されているという。
さらに、今話題の外国人参政権を認めれば、日本人は固有の権利と義務を失って外国人と同じ権利のみが許される究極の平等主義がまかりとおる。これはローマ帝国末期に帝国住民の全員にローマ市民権を与えることにより崩壊したことと同じである。
なんてことだ。これでは、日本を全体主義から守り、日本に民主政体と自由主義を担保する抑止力が米国軍の駐留となる。米国に従属しなければ日本は国の体面すら保てないほどの共産主義になっていたのだ。
ただ、紙面としてわずかな経済面での問題をタイトルにする不自然さから☆4つにした。このタイトルを付けた出版社は、経済面での民主叩きに便乗しようとして、逆に失敗したんじゃなかろうか。残念至極。
日本人エリートに素直な気持ちで読んでほしい
★★★★★
日本の国が衰亡の一途をたどっているという事が、痛いほどに伝わってきました。どうして、日本人はこんなにも愚かな選択肢を、選び続けてきたのだろうかと、歯噛みする思いです。
この本を読みながら、歴史にはご法度のもし…を何度も考えました。
もし、日英同盟の破棄をしていなかったら…
もし、対中戦ではなくドイツと対露戦に協同していたら…
もし、戦後の日米安保締結時に、保守政治を確立していたなら…
悔やんでも悔やみきれません。
中川先生も、断腸の思いでこの本をお書きになったのではないだろうか。この本が、大衆に受け入れられることはまずないであろう。せめて、優秀な選良の目にとまらんことを熱願する次第です。
僕はこの本をきっかけとして、保守の精神を正統に伝える思想を勉強したいと思いました。少しでも、本当の保守を理解する人がこの国に増えていくことで、わが国の亡国の速度が遅れる事を願っています。
これを読んで、「正統の哲学、異端の思想」も再読すべし
★★★★★
本書を読めば、民主党とは、ソ連崩壊後に主軸となった左翼全体主義の新たなヴァージョンの典型であり、かつ社会解体的思想ウィルスにどれほど現在の日本が侵されて、病状が深刻なものになっているかがよく分かる。
中川八洋氏の政治思想解析力は、左翼的思想の系列分析から始まって、その症状として何を生み出すのかの最終判断まで見事である。まさしく思想分析の真打ちと言って良く、思想ウィルスに対する最高の闘う医師GM(general medicine)であり、現代日本最高の知性であることをよく示している。
ちなみに、本書を読んでから「正統の哲学、異端の思想」を再読してほしい。
この書によって中川氏が1990年代半ばにおいてなしていた将来予測が、2010年を迎えた今ゾッとするほど当たっていたことがよく分かる。
可能ならば、中川八洋氏にはぜひ思想運動の中核になってもらいたい。大東亜戦争に対する国益から見た否定論も含め、我々の思想の健全性は、民族派よりも中川氏の言う英米との協調に立った思想保持の方が、未来的に理性主義・全体主義のウィルスに侵されないで済むのではないかと期待する。「出版社: 真正保守主義の会 (2010/06)」が現実の思想運動体として発足していくことを切に願う。
民主党の亡国政策を、政治思想から解明した名著
★★★★★
民主党の危険性について書かれた本は数多い。しかし、消費税率がどうの、菅首相の発言がブレるなどという批判は、枝葉末節である。確かな政治思想・法哲学から、民主党の政治を解明したのは、本書が初めてであり、たいへんな労作といえる。長期低落傾向にある自民党が復活を遂げるには、本書にあるように、真の保守政党に生まれ変わることしか方策はないであろう。自民党員、サポーター、地方議員、そして国会議員たちは、本書を必ず読んで、今後の方針をよくよく考えてもらいたい。