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痴人の愛 (新潮文庫)

価格: ¥704
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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耽美派における良作 ★★★☆☆
一人の男が無学な少女を自分の好みに合わせ教育してゆくうちに、少女はだんだん自我に目覚め、やがて男の手から離れて逆に男を美の奴隷にしてしまう…。

こうした男女関係に共感を抱く人も少ないと思うが、自分に置き換えると恐ろしいものがある。教訓として受け止めたいと思う。
「痴人の愛」以前/以後を分けるターニングポイント ★★★★★
 谷崎潤一郎の作品でも、「蓼食う虫」を経て「春琴抄」「盲目物語」などへ続いていく流れのターニングポイントになった作品。あらすじはもう皆さんが詳しく説明されているが、読み始めると、初期の作品に濃厚にあった異国趣味への傾倒が、この小説では何かしら揶揄を含めたニュアンスを含んでいるのに、まず気づく。西洋的な美しさ、西洋的な価値感覚に根ざした登場人物の底の浅い好みや行動を、谷崎自身は突き放した目で観察し、言葉にしている。譲治やナオミの意識をはっきりと立たせながら、作者は彼らの誰にも気持ちを没入していないようにしか読めない。また文体も、彼らの在り方にふさわしいぐらいの凡庸さのものを意図的に用いていると思う。総じて、この作品の登場人物にはとても冷淡な態度をとっているように思う。

 発表された時代に風俗的に大きく取り上げられたのは解るが、谷崎潤一郎の文学の中のもっと中身の濃い作品(「卍」「春琴抄」「盲目物語」武州公秘話」「鍵」細雪」など)が、この作品ぐらい注目を浴びてもいい気がする。「痴人の愛」以後の谷崎作品、という言い方が出来るメルクマールとして、ここで谷崎が何を捨てて何を拾ったのかを教えてくれる一篇だと思う。
ナオミ ★★★★★
ナオミは色気があります。しかし、少しイカれているのです。
艶やかな顔面等は彼等を虜にして飲み込み、種を植え付けナオミの芽を生やせました。
狂い乱れて外れていく彼等の至福の渦中で、ナオミはいつでも笑っています。

現実はそんなに甘くない ★★★☆☆
ちょっとだけ思い当たるふしがあって、読んでいて痛かった。

こういう暮らしが絶対長続きし得ないのは、やはり金の問題である。いくらプライドを捨て、相手のわがままを我慢しても、金は使えば確実に減っていく。この手の女性は、使える以上の金を絶対に使ってしまうのだ。それは収入や財産がいくらあっても同じこと。だから、確実に生活は物理的に成り立たなくなってくる。ほどよい「奴隷の生活」が長く続くことなど、まずありえない。

谷崎くん、まだまだ甘いなと、思わず昭和の文豪にツッコミを入れてしまったのでした。

バカは死んでも治らない ★★★★★
品行方正なサラリーマン、同僚からは「君子」と揶揄される「譲治」は、
行きつけのカフエエダイヤモンドの給仕の女「ナオミ」と出会う。日本人
離れしたその容姿端麗な様を目撃した彼は、彼女を引き取り、西欧人
の前に出してもなんら恥にならない「大人の女」に育て上げ、あわよくば
自分の妻として迎え入れようと決意する。しかし、事態の進展は彼の予
定とはまるで逆であった。彼は美の原石、ヒナ鳥を手に入れたのではな
い。実は彼自身が、逃れること困難な愛欲の罠にかけられていたので
あった…。


女心は秋の空とはよくいうが、言葉少なめの大人しい少女といった性格
だったナオミがページをめくるにつれ、どんどん淫らに強欲に変貌していく
様は、グロテスクの一言に尽きる。女が美しいのは、“ただ”美しいのでは
ない。男がその美しさに抵抗力を失い、やがては言いなりになると知って
いるからこそ、自分の美において望みどおりにならぬものなどないと勝ち
誇っているからこそ、美しいのである。

一方譲治も譲治である。もはや物語終盤あたりでは、読者もこのナオミと
いう女には「言ってもダメ」なのがわかってきている。それでもページ上の
譲治は許し、再び彼女を受け入れてしまう。“フラグ”たちまくりで、あーあ
な展開ではあるけれど、「バカは死んでも治らない」のだ。

精神分析の大家フロイトは生前、愛欲の欲動であるエロスともう一つ、死の
欲動のタナトスという概念を案出した。でもそれは「死にたい欲動」ではない。
宿主の生き死にもかかわらず、死んでもなお破滅的に反復を繰り返そうとす
る目的不在、主語不在のエネルギーのことだ。この作品はまさにその破滅
的な反復の物語だ。構築しては破壊し、再度構築しては破壊…。
それが「文化」だ、といわれればそれまでだろうが。