奈良の賛歌
★★★★★
私はこの小説の舞台奈良に住んだことがあります。
まさに小説の舞台である近鉄奈良近辺に3年あまり住んでいました。
そのころ見合い結婚してわたしは24歳(そのころは24歳までに結婚するのが女の花道とされていました、古い時代です。25歳でもう売れ残りのクリスマスケーキだのオールドミスだのとよばれたんですから)
でも夫と二人暮らしでしたが新婚の喜びなんてまるでなく、「新婚が楽しいなんてだれがいいった」とつぶやく毎日でした。
あのころの遠い記憶と小説が重なり、感慨深い小説です。
わたしもその夫とわかれ、別の人と恋愛して(いまの夫)別の人生をあゆんだので
ヒロインの見合い結婚した夫に対する覚めた気持ちや嫌悪感、その後出会った恋人に対する激しい情熱がわかるのです。
まるで失われた青春をとりかえそうとするかのように、
親の方針に従って、嫁にいった反動から、自分が女であることを確かめようとするかのようなヒロインの新しい恋に対する激しい情熱が、わかる気がするのです。
また奈良ははっきりいって住むと退屈な町ですが、小説ではその史跡や風情が美しく歌われ、
小説を陰影深くしています。