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「情報社会」を読む

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 青土社
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読みにくいけれど、これはアンチョコ。役に立った。 ★★★★★
最初は、本当に途方に暮れた。著者はやたら軽い口調で偏見込みで断定する。
それとは裏腹に、私は出てくる人名を追いきれず、論点もつかめず、自分の基礎知識のなさに打ちひしがれて疲れてしまう。

しかし、がんばって読むと、情報社会のみならず、現代社会を読むための視点が手に入る。キーワードが漏れなくあるから、ここから深められる。むしろこれはアンチョコ。議論を単純化して見せてくれる。各学派の位置づけが分かる。

私にとっては、数年に一度出会うような、噛めば噛むほどおいしい本だった。
情報の裏に何らかの動機が・・・(p.200) ★★★★★
 本書は、ヒュー・マッケイら著、田畑暁生訳『入門 情報社会の社会科学』NTT出版、2003に、技術決定論に対する批判的文献として引用してあったので、読んでみた。著者、フランク・ウェブスターは英国の社会学者であるが、邦訳は本書が初めてのよう。著者は、情報社会論やその周辺にに位置づけられていた説や著作を、痛烈に批判し、検討を行なっている。斬新な情報通信技術の開発や発展と社会の変革に光を当てることに首を突っ込んでいる読者にとっては、冷や水を浴びせられる内容かもしれない。
 しかし、米国発の、劇的な技術と劇的な理論に衝撃を受けるのが楽しみになってしまった日本人にとって、このような研究の邦訳を手にできることはありがたい。できれば、著者が読んでみよ、と述べている三人の研究者である、ハーバート・シラー、ユルゲン・ハーバマス、アンソニー・ギデンズらの文献にも目を通してみたいもの。とりわけ、情報領域でものをいうのは、企業の行動、市場原理、権力の不平等性である点を指摘するシラーの邦訳がないのは残念。

 なぜ現代において情報が重要なのか、どのように社会的、経済的、政治的関係に影響を与えるのか、驚くほど多様な意見があり、共通の関心領域を検討したい、というのが執筆の動機だ(pp.9-14)。登場する論点の一つは、新しい社会が来たとする論者の使いたがる「情報社会」概念、もう一つは、既存の関係との連続性を「情報化」という用語に込めて使おうとする論者である。本書全体は、「情報社会」概念自体への懐疑的視点で貫徹。

 現代社会では情報がキーワードとなっているが、この性質や意味が論者の数ほどあって合意形成がなされていないという観点で、情報の定義を質と量の面から、追求し始める。

目次、章節。索引あり。原著参考文献と訳者の作った邦訳文献リストあり。ひもなし。
理論的情報社会論 ★★★★★
 近年、膨大な数の「情報社会」に関する書物があり、情報社会を考えたい人はいったいどれから手をつければよいのかわからない状態にある。そんな人にぜひお勧めしたいのが本書だ。たしかに数多くの「情報社会論」があるけれど、そのほとんどは、情報社会のもつ特定のイメージや常識的理解を前提としており、では一体情報社会とはなんぞや、というような社会学的問題を扱ったものは皆無に等しい。
 そんな中で本書は、数々の理論社会学の議論を紹介しながら、情報社会を多角的に整理しようと試みている。しかも著者の立場は情報社会=新しいステージというような通俗的理解に疑義を唱え、むしろ近代との連続性を考えている点でも評価できるだろう。
 本書のように理論的仕事がなされている情報社会論がほとんどないのは疑問だが、その状況がかえって本書の価値を高めているといえる。しかも原書は1995年にもかかわらず、全く古さを感じない。しかしまあそれも理論社会学の進展がなかったという悲観的な見方もできるのだが。とにかく情報社会を社会学的に知りたいという方は必読の本だろう。
「情報社会」を読む ★★★★☆
この本は、現代社会をどのように理解するのかという命題に対して様々な視点を提供してくれる。しかしながら、著者は明確な答えを本書では提示していない。つまり、本書の最大の狙いは、読者ひとりひとりが各々の答えを見つけてもらいたいということにある。本書における一貫したテーマは「情報」をどのように位置付け、社会のなかでどのように理解すべきかということである。加えて、著者の根底に流れる思想は、「技術決定論」に対する懐疑的な姿勢である。情報社会を論じている本の大部分が多かれ少なかれ「技術決定論」の立場に立つものが多いという事実から著者の見解は情報社会を理解するうえにおいて新しい側面を提供していると言えよう。本書の内容については、情報社会を論じている代表的な学者(ベル、カステル)、直接には情報社会を論じてはいないが情報について言及している学者(ギデンズ、シラー等)の学説について「批判理論」を展開しているため、本としての理論的整合性には欠けている。しかしながら、これは本書の魅力や重要性を損なうものではない。情報社会を様々な視点から研究したい読者や、これから研究を始めたいとする読者にとっては今後の研究方針の指針として最適な入門書と言えるだろう。
地に足のついた「情報社会」論を求める人に ★★★★☆
 「情報社会」というものを、メディアから、経験から当然のように多くの人々の知るところとなった昨今、私たちは「情報社会」をあまりに単純な技術革命と考えるフシがある。いっぱしの大学の学者にまでこの傾向は明らかに見てとれる。だが現実には我々はこの革命の潜在力を、プロセスをどこまできちんと考えているだろうか。アメリカのITブームが去ったことで、単純なIT信仰が終わりを迎えたとすれば、今こそ、私たちは19世紀の産業革命に次ぐといわれるこの「大変革」について、腰を据えて、より多面的に考える必要があるのではないか。

 著者は現在第一線で活躍している、名前だけ聞いても平伏したくなるような社会科学者たちが論じる様々な「情報社会」論を、極めてクールに・平易に解説すると同時に、批判的検討を加えている。

 本書は私たちの「情報社会」への安易なイメージを吹き飛ばし、より真摯に・多面的に、現代における最大の変動を考える上で最良であると同時に、一線の社会科学者の入門の書としても価値があるはずだ。