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カメレオンのための音楽 (ハヤカワepi文庫)

価格: ¥945
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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見たままを描く、という稀有な才能 ★★★★★
 翻訳者に魅かれて、若い頃に読んだのだが、やはり印象に残っているのは「美しい子供」。

 マリリン・モンローには何故か惹き付けられるものがあって、様々な写真や本を集めたが、
私の印象は最初から変わらず「迷子になった子供のような」人だった。
彼女の僅か36年の人生を考えても、ずっと自分を保護してくれる父親を求めていたような気がする。
イノセントで傷付きやすく、しかしその魂を包む肉体への偏見から逃れられなかった人。
誰もが羨む外見を持つ美形というものは、内面を評価してくれる伴侶という存在を得難い気がする。

 カポーティの筆から浮かび上がるのは、見たままのマリリンの姿。途方に暮れたような、美しい子供。
カポーティだから見られたのかも知れないし、カポーティにしか見えない姿だったかも知れない。
いずれにせよ、孤独な大女優の素顔の一部を知る、貴重なスケッチだと思う。
きっとTCが好きになる ★★★★★
初めてカポーティを読んだのは、生意気盛りのローティーンのとき。
『遠い声 遠い部屋』。本棚を見たら、黄ばんだ文庫本がありました。
『カメレオンのための音楽』は、本読みの大先輩が「再読したらやはりよかった」というのと、『冷血』の映画は観たけど、本は途中読みだったので、再トライの意味で買ってみました。
「初めて読んですごくよかった」です。
やはり秀逸なのは、マリリン・モンローとのスケッチ。
これを読むためだけにでも、買う価値はあるのではないでしょうか。(文庫だし)
いろんなTC(トルーマン・カポーティ)がいて、どれもTC。
何かのあとがき(?)に、「彼にとっては生きることすべてが病因だった」(というようなこと)が書いてありましたが、さもありなん。
でも、好きにならずにいられない人です。(隣にいたら、また、別かもしれませんが)
野坂さんの訳も素敵でした。
カポーティ最後の、実話ベースの切れのある短編小説集 ★★★★★
村上春樹訳の「ティファニーで朝食を」でカポーティの作家としての圧倒的な存在感に魅了され、原書に加えて訳書の本書も購入しました。

主として、カポーティが自身に纏わる実話をベースに、(氏曰く)修得したあらゆる文体・技巧を駆使して描いた短編小説集です。生前最後に出版された小説ですが、マリリンモンローから殺人事件の容疑者、カリブの島の老貴婦人に至るまで登場人物はとても幅広く、「ティファニーで朝食を」程の余韻は残さないまでも、これ程の切れと奥行と神秘性(必然なる偶然等)を併せ持つ短編小説には中々巡り会えないと思います。

個人的には、好きなラフマニノフやゴッホ、それから日本(人)という言葉が(良い意味でなくても)多く引用されていたことや、最後の短編で(私が尊敬する)三島由紀夫の自死のエピソードを登場させ、友人である三島が過去に「カポーティは自殺するだろうと確信している者の一人だ」と述べた事を引用し、自殺する位ならその原因となる相手を殺すと言い切ったのがとても印象的でした。

そのカポーティは畢竟、自分を客観的に見つめ脅かすもう一人の自分を殺した(つまり、結果的には自殺した)のではないかと感じられました。なぜなら、その最後の短編の設定は、奇しくもカポーティがもう一人の自分と問答しあう内容だったのです。
特異な才能 ★★★★★
カポーティが、長いスランプの後に生み出した渾身の短編集。
この本の、特に序文を読むと、小説を創り出すことの困難さが伝わってくるし
そして何よりもカポーティが書くことにとりつかれた人間だった
ということが伝わってくる。
この本に収められた作品の中で、カポーティは小説の様々な形を提示している。
「冷血」に通じるようなノンフィクション風のもの、
会話形式のもの、ポートレイトなど。多彩で読み応えがある作品集になっている。
若くしてデビューし書き続けてきた作家の、キャリアの終盤に位置する短編集だけれど
この本には作家としての熟練だけではなく、斬新さや実験性があることに感動する。
カポーティの才能を堪能できる一冊だと思う。
限りなく繊細 ★★★★★
最初に買ったのはもう20年以上前(18歳の頃)の単行本でした。野坂昭如が翻訳しているのを見て、「きっとへんてこりんな小説なんだろう」と期待しました。読んでみるともちろんへんてこりんだったのですが、洒脱な言葉遣いとむき出しの感受性に満ちていて、素敵な小説だなぁと思いました。特に、マリリン・モンローを描いた「美しい子供」は秀逸で、今思えばカポーティだからこそ、肉感から切り離されたマリリンを(つまり男でも女でもない視線で)あんなにも可愛らしく書けたのだろうと感じます。