期待したいが道遠し
★★★☆☆
鍼灸を,科学的な見地から見ても十分に納得が行くように,症例やデータを蓄積して実証してゆこうという姿勢は正しいし,立派だと思います。
鍼灸に持ち込まれた五行説のこじつけにより鍼灸医学が混乱したこと,また古代に一旦鍼灸の大系が確立した後は,中国に長く見られた官僚支配と結びついて,以降は進歩・発展に乏しくなってしまった事なども述べられており,鍼灸の歴史を客観的に捉え直そうとする態度も窺え,良いと思います。
ただ,筆者が主宰している東洋医学研究所という鍼灸の一派の考え方が中心になっており,鍼灸全体の標準的な理論や標準的な療法というものにはあまり触れられていません。
実践的にも筆者らが推進する「太極療法」の紹介になっており,それはそれで良いのですが,「良い鍼は太極療法だけではないだろう」「良いことばかり書いてあるが,うまく行かなかった事もあるのではないか」という疑問がやはり生じてきます。
効果の実証でも動物実験と臨床例がまぜこぜに書かれており,もう少し幅広く,整然と,データも豊富に捉えられないかと思います。
日本の鍼灸医学の標準化や,臨床例や実験結果などをもっと広い範囲で蓄積できる体制を作ること,そして鍼灸の効果の一層科学的な実証と,期待したいことはたくさんありますが,道はなかなか遠いようでした。
一般教養書である
★★★☆☆
現代医学風に書かれてはいるが、選穴に関する診断学が欠けている。肝心のところで民間療法のレベルを出ていない。
素人向けの一般教養書としては良いのではないか。
何故、鍼が効くのか?
★★★★★
鍼治療で「〜が楽になった」「〜が治った」という話はよく聞くことだと思うけど、この本にはどんな病気のどの部分に鍼が効いているのかが解かりやすく書かれている。何故、鍼が効くのか?が理解できた。面白いなぁと思ったのが、マウスの老化防止の実験。鍼をすると長生きするだけじゃなくて、肝臓や膵臓の細胞の老化を抑えて正常に保つことができるってところ。ほかのところでも健康で長生きするための話が載っていて、全体的に読みやすかったです。
200ページくらいだけど、情報量が結構多かったかな。
技術の説明のところで、研修鍼灸師のバラバラっぷりは必見です。
なるほど!
★★★★★
題名の『長生き健康「鍼」』ですが、「健康」と「長生き」と「鍼」がどう繋がるのか、題名見たときは「何だろ?」と思いましたが、内容を見て「鍼」によって、「健康」で「長生き」できると感じました。
正直、ハリ=腰痛とか肩こりだと思ってましたが、糖尿病とか高血圧とか免疫の増強にも効果があるということで、個人的にもお世話になりたい位、色んな病気への効果が期待出来るようです。
本書では特に後半なんかはハリ治療の効果を西洋医学的な側面で捉えてますし、ツボの正体についてなど実験結果も数多く載ってます。
最近医学系の専門書にもちらほら東洋医学の事は載ってたけど、こんだけ東洋医学の事を科学的に取り上げた一般書はないかなと思います。(多分)
かなり内容も詰まっていて、これからなお注目の分野じゃないかなと感じました。
価値ある書
★★★★★
鍼灸の一般的な書には、東洋医学の概念を押し付ける内容が多く、これを鵜呑みにすることが当たり前に書かれているような気がする。この書では、東洋医学でありながら西洋医学(実証医学とかかれている)の立場でも説明できることを目的としており、その根拠となる実験や研究まで載せられており、いままでの概念だけの書ではない。価値ある鍼灸の証拠がたくさん見受けられる。また、鍼灸の技術の客観的な研究やめったに見ることのない症例などこれだけでも読む価値がある。