そして、朴訥とした軍人である山本権兵衛が、会津の家老の娘から
女性として初の海外留学生となった大山捨松(大山巌夫人)と共に
西郷従道からの命を受け、「どうか鹿鳴館にお越しください」と
それぞれの妻たちに出会い、それぞれの「家庭の事情」に
踏み込んでゆく、という形をとったオムニバスになっている。
しかし、芸者・遊女出身であったからとて何であろう?
作者は、西郷従道にこのような意味の言葉を語らせる。
男は、出自が卑しいと、どこまでも卑しいままだ。
しかし女は、出自がどうであろうと、偉くなったらどんどん
美しくそれ相応になってゆくのだ、と。
これは、作者自身が、明治の女性に対して考えていたことでは
ないだろうか。
強く、優しく、たくましく、しなやかな、明治の女性たちの美しさは、
色も形も違うさまざまな花を見るようだ。
また、作中のところどころに、「その後の有名人」がちらりちらりと
顔を出すのも楽しみの一つだ。
この作品は、明治の偉人の妻、に焦点が当たっているが、
明治の市井の妻、について読むなら、群ようこの
「あなたみたいな明治の女(ひと)」をおすすめしたい。