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ラスプーチンが来た 山田風太郎明治小説全集 11 ちくま文庫

価格: ¥1,242
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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明治の妖怪たち ★★★★☆
明治時代には妖怪がとでも呼ぶべき人物がたくさんいたものだ。
本書冒頭に登場する,ロシア正教のニコライ大主教、明治天皇大葬の日に、妻とともに自刃した日露戦争の聖将乃木希典
浮雲の二葉亭四迷、『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』耽美的な作風の文豪谷崎潤一郎,
そして本作の主人公である、日露戦争での諜報活動で暗躍した,後の陸軍大将明石元二郎。
これらの人物が建設途中の神田ニコライ堂のドームのテッペンで一堂に会する。この趣向はもちろん風太郎翁の創作だが
彼らが同じ時代の心東京にいたのは事実なのである。

そしてラスプーチンである。謂わば,ロシアの道鏡であるが.幻影ばかりが大きくなって政治力はそんなにはなかったという説もある。
本名グリゴリー・エフィモヴィチ・ラスプーチンは帝政ロシア末期の怪僧怪人物。
20歳の時、サンクトペテルブルクに出りと、人々に病気治療を施して信者を増やし『神の人』と称さた。
それを背景にアレクサンドラ皇后に取り入った。その後、皇帝ニコライ2世に謁見。政治に口を挟むようになった。

反対する皇族や廷臣に疎まれ射殺されるがその直前、ニコライ2世に予言めいた言葉を述べる。
「私は殺されます。もし、私を殺す者が百姓であれば、ロシアは安泰でしょう。
しかし、もし、私を殺す者に陛下のご一族がおられれば、陛下とご家族は悲惨な最期を遂げる事しょう。
そしてロシアには長きにわたって多くの血が流れるでしょう」

というわけで、役者は出揃いました.あとはお読みあれ。
日露戦争の陰の英雄と、ロシアの怪僧との対決 ★★★★★
明治22(1889)年2月11日、明治憲法発布の日に起きた文部大臣・森有礼刺殺事件から、
明治24(1891)年5月19日、大津事件で刺され、傷を負ったロシア皇太子が日本を離れる
日までの約二年間が、物語の舞台。


情景として、足かけ八年の歳月をかけて建てられた三八メートルの鐘塔を持つニコライ大聖堂と、
建築期間わずか十一ヶ月という速成の凌雲閣十二階が描かれ、それがそのまま大国ロシアと、
新興国家日本の関係を象徴しています。


そして、本作の主眼は、血友病患者に対する止血の術で、ニコライ二世の一家に絶大なる信頼を得る
ラスプーチンが、大津事件の裏で仕組んでいた陰謀を、日露戦争時のスパイ活動で日本を勝利に導く
陰の立役者・明石元二郎が暴いていくところにあります。


両者の対立の構図を彩るのは、綺羅星のごとき歴史上の偉人たち。


本作ではなぜかラスプーチンの通訳を務めることになる近代小説の父・二葉亭四迷、
勅語不敬事件を起こす内村鑑三、のちに「青山の行者(穏田の行者)」と呼ばれる
神道行者稲城黄天(飯野吉三郎)、そして、大津事件の「凶徒」となる滋賀県巡査
津田三蔵――等々。


これらの人物たちが、大津事件を焦点として結びつけられ、
妖しく眩惑的なアラベスクを織り上げていくことになります。



生身の登場人物たち ★★★★☆
明石元二郎、二葉亭四迷、乃木希介、ラスプーチン、チェーホフといった歴史上の面々が、実に生き生きと描かれている。
他の人が書いてもこんな風に生き生きとは描けないのではないか。
受験で得た無味乾燥な人物像が、鮮やかに改変されていくのがわかる。
ストーリーも申し分ない。
山田風太郎の数多い傑作の中の一つに入る作品だと思います。