１９４９年、わずか３０歳の若さで飛行機事故に散ったヌヴーの事故１ヶ月前の文字通りの最後の録音です。この演奏は以前同じミュージック＆アーツ社から出ていましたが、ＬＰから直接録音したようで音質が悪いものでした。今回２００８年に音質改善に定評のあるPristine Audio のXRシステムによるデジタル・リマスタリングを行い再発売されたもので、その音質改善には目を見張るものがあります。特に高音部分の美しさは今まで他のCDでは聴けなかったもの。１９４９年の録音技術ではとても無理だとあきらめていた、ヌヴーの７色の音色とはこういうものだったのか、その姿を垣間見たような気がします。
第１楽章３分のソロの部分からその美しい音色を堪能できますが、圧巻は１９分３０秒からのカデンツ。ヴァイオリンソロのめまぐるしく変わる音色とテクニックに圧倒されてしまいます。この部分を聴くためだけにこのCDを買っても惜しくないくらいです。
同梱のミンシュ指揮のツィガーヌ（ラヴェル）詩曲（ショ−ソン）も前出ＣＤより大幅に音質が改善されました。
ドラティ指揮のブラームスの協奏曲は初めて聴いたので、音質改善効果はわかりませんが、実に久しぶりのプレスです。定番のイッセルシュッテト盤よりオケの質が落ちますが、マイクの位置の関係からかヌヴーのヴァイオリンの音像はより近くに定位しますので、よりヌヴーのヴァイオリンを堪能できます。ただ、カップリングのベートヴェンに比べるて音質はおちますが、これはマスターの限界なんでしょう。演奏に感動した聴衆からは第１楽章で拍手が入ります。やはり実際の音は違うのだと思いますが、そう意味で言えば、ベートーヴェンの音質改善は奇跡に近いのではないかとも思えてきます。私が聴いた中では、このベートヴェンは文句なし最高音質のひとつです。現在他の高音質といわれているＣＤは皆、入手がかなり困難な状態ですので、そういう意味でも貴重なＣＤだと思います。