プルーストが切り開いた内面世界の作品化というのが、中村さんのテーマだったと思いますが、篠田一士と丸谷才一という強力な応援団がついていたおかげで、かなり実験的な作品を書きながらひたすら我が道を模索し続けました。そして、たどり着いたのが「四季」の書き方。難しい言い方をすると、意識の流れを絡め取るために開発された重層的なエクリチュール。
従って、「四季」は他の小説のように、すらすらとは読めません。かなりの集中力も要求されます。でも、努力するだけの値打ちはありますので、途中で投げ出さないようにしましょう。読み始めると、主人公の頭の中に入り込んだような感じになりますが、そうなったらしめたもの。その感じを味わうのが、この作品の味わい方なのです。ストーリーなんて二の次でいいんです。次から次へと浮かぶ想念を追いながら、濃密な追体験ができれば、これまでに味わったことのない充実した読書体験ができると思います。あなたもチャレンジしてみませんか?