オランジュリー美術館に行きたい!
★★★★★
かちっとした文章の中に、著者の想いがぴりりと効いて、
読んでいて気持ちのいい本でした。
それにしても、あんなにぽわーんとした平和な絵を描いたモネという画家が、
私生活では意外にも、贅沢好みで、ちょっと人でなし。。。
病気の奥さんと6人の子連れの人妻との共同生活って。。
ちょっと想像がつきませんが、そんな中、あんなきれいな絵を描いていたんですね。
それでも、周囲の人々がどんどん巻き込まれていってしまう、
モネの人間的魅力というものが、この一冊を通じてよくわかりました。
「もっと知りたい」シリーズは、何冊か読みましたが、
なかでもこのモネは、図版が豊富で贅沢です。
モネのタッチの変遷がわかるページは、見るけで納得。
何より、オランジュリー美術館の睡蓮の見方を解説している特集はよかった。
こんなの面白い見方があったんですね〜
ぜひぜひ、オランジュリーに行ってみたくなりました。
光を描き続けたモネ
★★★★★
監修者で三菱一号館美術館館長の高橋明也氏が、はじめにで「モネの画面を根本で支えるのは、カンヴァスに横溢する、イル=ド=フランス地方特有の繊細で柔らかい光である」と看破されたことは参考になりました。モネの一連の作品を通して感じてきた感覚がこの文に表れているようです。
印象派の創始者とも言われるクロード・モネの描かれた作品群を並べて観賞することで、その人生の歩みを知ろうと言う編集になっています。
タッチや対象の移ろいは、42ページの「印象派の巨匠、水へのまなざし」の項で詳しくその変化の過程を比較して説明してありました。
モネが日本の浮世絵に大変な影響を受けたのはよく知られています。本書の36、37ページ「モネと日本の美」と題し、異国への憧れから、インスピレーションの源へ、というテーマで紹介してあります。
彼が日本びいきなのは、54ページ以降に語られているジヴェルニーの庭や、彼の住まいに表れています。日本風の太鼓橋をかけ、藤の花をその上に咲かせたようです。浮世絵のコレクションも相当なもので、家の中も浮世絵だらけで、洗面室、読書室、食堂には浮世絵しか飾られていないという徹底ぶりが、「ラ・ジャポネーズ」を生んだのでしょう。
本書の後半は、彼の代表作とも言える有名な「睡蓮」に関して多方面から解説を加えています。様々な表情を見せる睡蓮の連作です。多様な光を取り入れながら描き分けた作品群は「印象派」をイメージづけるものでした。
モネの生涯を辿りながら、睡蓮に「枝垂れ」をモティーフに取り入れたように日本趣味に浸り、美しい庭の睡蓮を書き続けた思いも十分に理解できました。