著者の「神戸愛」あふれる本だが、クラスター(産業集積)や地域ブランドの本だとは期待しないほうがよい
★★★☆☆
神戸生まれで神戸育ちの著者が、地元神戸を代表する「産業」である「神戸スウィーツ」について、足で稼いでまとめたレポート。
職人さんや材料屋さんの話に耳を傾け、いろいろ面白い話を聞き出した点については評価していいが、いかんせん「経営学」というには、あまりにも分析がなさ過ぎる。
「職人養成論」としては面白かったが、オーナー・パティシエとして、独立して自分の店をもって経営するという「起業家論」としての性格も弱いし、「クラスター(産業集積)論」としての意味づけも弱いし、「地域ブランド論」としても現状を記述しているだけで、歴史について触れているが、メカニズムにかんする分析がない。したがって、他地域で地場産業育成の参考事例として捉えるにはちょっと無理がある。
まあ、著者の「神戸愛」があふれる本であるので、「地元愛」が地場産業育成のひとつのカギであることを実証したことにはなっているのだが・・・
どうせなら、カラー写真をふんだんに使ったムックのような形で、お店の紹介と商品の紹介を兼ねた作りの本のほうがよかったのではないかな?
残念ながら中途半端に終わってしまっている本であった。