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裁判百年史ものがたり

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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日本の司法制度に影響を与えた裁判が取り上げられている ★★★★☆
夏樹氏は推理作家として知られているが本書はノンフィクションである。明治24年(1891年)の第1例「ロシア皇太子襲撃、大津事件」から平成9年(1997年)の第12例「被害者の求刑」まで、約100年に亘る我が国の裁判の中で著者が日本の司法制度に大きな影響を与えたと考える裁判を12例取り上げられている。

取り上げられたテーマは司法権の独立、冤罪、尊属殺人、被害者の権利の確立まで多岐に亘っているがどれも重いテーマばかりである。但し夏樹氏は一つ一つの事例を臨場感をもってわかりやすく語っているため、読みやすく、ぐいぐい引き込まれた。

本書を読んで日本の司法制度は紆余曲折を経ながらも、その時代の裁判官を始めとする関係者の尽力により改善が図られてきたことがよく理解できた。特に第12例については従来は「被害者の保護」が行き過ぎることにより、裁判が個人の感情に引きずられて量刑が厳しくなる方向性に行くことを懸念していたが、被害者のおかれた経済的・心理的な苦しみとそれを救済する制度があまりに手薄であったことが初めて理解できて、考え方が変わった。
「ものがたり」 ★★★★★
「ものがたり」と題してあるのが納得できます。
それは単なるドキュメンタリーにはなっていず、楽しい「読み物」になっているからです。

内容としては、様々な十二の裁判が選ばれています。
それはいずれも歴史的にエポックメイキングな裁判ばかりで、作者の意図が十分に伝わってきます。

その中でも、「大津事件」と「翼賛選挙」の2章には感動しました。
権力機構からの様々な圧力に屈せず、「司法の独立」を貫いた二人の裁判官の気概に打たれたのです。

その対極として「大逆事件」が取り上げられており、その他にも死刑の基準を作った「永山事件」、猥褻の基準が問題となった「チャタレー裁判」や「離婚」の基準となった裁判も取り上げられていますし、「尊属殺人」も扱っています。

更には、終戦直後の憲法の狭間の時期に起きた「帝銀事件」「松川事件」「八海事件」と言った、「自白」の問題が浮き彫りになった事件も取り上げられています。

いずれも名前は知っている事件なのですが、裁判記録を丁寧に読んで書かれた「読み物」は、実に読みやすく楽しい作品になっていました。
裁判員に当たる前に ★★★★★
我々には、長らく、裁判官というのは、縁のないものであった。
しかし、はじまってしまった、裁判員制度。
我々が、裁く側になってしまうかもしれない。

この本は、近代におこった「大津事件」など、重大な事件12をあげて、
裁判官や弁護士の苦悩を掘り起こし、裁判の本当の姿に迫ってくれる。
ノンフィクション作家(正確には、ミステリー作家か)夏樹静子の手になる
裁判の「物語」を味わってみるのも、物の見方を豊かにしてくれるのではないか。