どの曲の音も何処か誇らしげだ。アレンジが抜群にいい。POPと一言で片付けてしまうには足りないほど、もっとディティールにこだわったフュージョンの「カッコヨサ」が間違いなくある。かといって、電気の音が彼女の声を殺してしまうのではないか、という心配は全くいらない。全て彼女の声が第一にあり、あれだけカッコヨク賑わす音たちがそれより前に出ない。電気音とアコースティック音が、ちょっと不思議で、全くクールで、やっぱりスイーツな音の美術館をつくる。
このアルバムは曲が進むに連れてのめりこむ。どんどんいい曲に出会ってゆく。それがアルバムとしての名盤といえる“感覚”だと気付く。ハまる。4曲目にノンボーカルのクール且つ柔らかな曲で、リスナーの脳を落ち着かせた後に来る5曲目、「transworld」で再び加速し始める、そんな曲順の構成がいい。ライブのステージ構成のようだ。山や谷があって飽きさせない。その後も様々な色の曲が登場し、楽しませてくれる。序曲から始まったアルバムの効用が落ちない。例えれば一口目のビールのおいしさが十一口目まで続くのだ!
“ネコが♪”と始まる「what cats feel」のような矢野らしい曲もある。しかし今まで以上にベース音がクールにきまり、JAZZYな音の肌触り感がビシビシ伝わってくる今作の流れの中での“ネコが♪”なのだ。
ラスト曲まではあっという間だ。ドライヴで流したらもっとあっという間かもしれない。矢継ぎ早にいい曲が色々な形に展開し、加速してゆく作品だったから。
まず楽曲が素直に良く佳曲揃いだと思います。
歌詞もなかなか粒ぞろいで、特に「Money Song」は名曲だと思いました。
サウンドもオーガニックな手触りを残した聴きやすいもので、ティンパンなどのプレイの良さが素直に伝わってきます。
よい楽曲によいプレイによいサウンド、そしてよい歌唱。
素直に「これ、いいなあー!」と思える良盤だと思います。
ジャケットイラストもキレイ。