後味悪い感じが好き
★★★★☆
短編集なので4つの物語が語られていますが、一番好きなのは「幸福な淑女」です。他の3つとはまったく毛色が違い、非常に大人なお話でした。ものすごく後味悪いです。が、それがよいのです。
ラスト付近、「おかあさまはしあわせだと思う?」というドロシアの問いかけが苦いです。家族からはできるだけいい条件の男を結婚しろとせっつかれ、親の言う通り完璧な「淑女」になろうと努力したのに社交界ではつまらない女として壁際に追いやられ……。ようやく得た誰からも羨まれるような結婚が少しも幸せではないのに、弱音を吐くこともできず、かといって貞淑な妻という枠を飛び出すこともできず。。。
確かに、娘に八つ当たり(のようにしか見えない)しているドロシアは良き母ではないと思いますが、それは全部彼女のせいだろうか??夫の愛人だった女性も報われないけど、正妻だって幸運とは言い難い。家と家との結婚はこんなにも不幸を産むんだなぁ〜と、読んでいるのが少女小説であることも忘れてうなってしまいました。
個人的にこういうどうしようもない話が好きなので思いっきりツボでした。もっと血なまぐさくて濃い感じでもよかったけど……そこらへんにコバルトの限界を感じます(笑)
「幸福な淑女」という皮肉なタイトルも心に残りますね。久しぶりに良質な読み物を読ませていただきました。
ちょっと大人な短編集
★★★★★
着る人の心をうつすドレスをつくるクリスと
誇り高い公爵子息・シャーロックの
ヴィクトリアン・ロマンス。
今回は短編集で、四作が収録されています。
クリスに姪のドレスを依頼に来た婦人の
秘めた想いを描く「ドレッシング・ルームの高い窓」
シャーロックの先輩の弁護士・ケネスと
男爵令嬢ファニーの恋の続きを描いた「希望という名の猫」
シャーロックの寄宿学校時代を描いた「窓の向こうは夏の色」
モアティエ公爵の妻を中心に、その結婚の時の話と
その子どもたちの恋のお話「幸福な淑女」です。
前半2作が雑誌に掲載された話、
他2作が書下ろしです。
初めのお話のゲストと、最後のお話のモアティエ公爵夫人は
ともに大人で、いつもとちょっとお話の雰囲気は違いましたが
大人だからこその切ない感じもよかったです。
クリスやシャーロックを筆頭に、このお話の登場人物は
自分の感情はあまり表にださないのに
内面は情熱的でひたむきなところが、ぐっときます。