ゆったりとたゆたう
★★★★★
杉原さんらしい、閑かで優しいお話でした。
12年前に1ヶ月だけ一緒に過ごした英之と遼が再会して、お話は始まっていきます。
遼が抱えるトラウマをゆっくり穏やかに解決しながら、少しずつ気持ちが高まっていく様子は、
寄せては返す波に揺られているような心地よさを感じさせました。
ただ、あまりに淡々と閑かにお話が進展していくので、読んでいて多少メリハリに欠けてしまった気も
してしまいました。
もう少し、うねりのようなものがあったら、もっともっとよかったのにと思います。
でも、しみじみととてもよいお話でした。
とても静かな映画のような
★★★★★
今まで何作か読んできました。
感情の動きがとても丁寧で好きなのですが、その流れを時には少しだけ回りくどいように
感じてしまうことがありました。
この作品ではもう少し淡々と流れているようにも感じて、個人的には読みやすかったです。
カメラのフィルター越し、あるいはスクリーン越しの映像を通して作品全体の風景を眺めて
いるような印象です。
親子関係の問題からねじれてしまった遼が少しずつ変わって行く様子と、それを適度な距離
を保って見守る英之の恋。
大きな盛り上がりには欠けるかもしれませんが、何度か涙があふれる場面がありました。
切ないけれどとても愛おしく、温かい気持ちで読み終えました。
「読む」という意味で、単純ではない作品。
★★★★☆
「読む」という意味で、単純ではない作品。
過去に一か月だけ時間を共有したことがある二人がまた再会して恋人同士になる。
こう書いてしまうとシンプルに感じる。
実際基本線はシンプルで、話を追う目的で字面をピックアップしていけばかなり少ない単語に集約できる内容。
でも、この本の旨味?は、基本路線ではなく、父親との関係上で一か月だけ水原家に引き取られてきた笹塚の想いや迷いにある。
本は二部構成で、一部が水原視点の恋愛とか二人の関係重視。
二部が笹塚視点で、水原との関係が成り立っている上での父親との関係や自分の気持ちの吐露。
これがリアルで読みごたえもあり、素直に感心した。
父親の苦痛を解った上での子供ながらの想いや理解が手に取るように伝わってくる。
正直BLとしての恋愛という視点からは全く外れていてテーマずれはしているが、それでも読んでよかったと納得できる内容はおススメに値する。
普段斜め読みする人は、じっくりしっかり読んでいかないと笹塚の気持ちの吐露がわかりずらかったり伝えたい状況がわかりにくい場面もあるのでご注意を。
いつもの杉原さん
★★★☆☆
いつもの、地味だけど丁寧な杉原さんて感じの内容でした。
ただ、杉原さんのこのパターンの切なさとか萌えに耐性ができてきているので、ちょっとだけ退屈でした。
でも杉原ファンなら読んどく一冊だと思います。
挿絵も素敵でした。