コングレーブ大佐の秘密兵器
★★★★☆
時は1812年のクリスマス。この年、ナポレオンはモスクワ遠征で空前の大敗北を被りましたが、ここイベリア半島ではフランス軍と連合軍の戦いが何時果てるともなく続いています。そんな中、各国軍隊の脱走兵たちが英国軍を装ってスペイン山中の村を襲い、悪の限りを尽した上、その村の古い修道院への礼拝に訪れていた英軍高級将校の妻などを人質として身代金を要求します。
現地感情への影響を恐れる英遠征軍首脳部は、我らが英雄、リチャード・シャープに彼女達の救出と脱走兵掃討を命じます。初めて大隊規模の部隊を預かり、勇み奮い立って出かけたシャープ君ですが、20年来の天敵とも言うべき「あの男」が脱走兵グループに君臨していることを発見するのでした。
シリーズ14番目の本作、見所は「コングレーブ大佐の秘密兵器」、すなわち初期ロケット砲の活躍振りでしょう。戦闘後の惨状を目の当たりにしたシャープ君の、「将来の戦場は全てこんなふうになるに違いない」という呟きが妙に印象的です。
さて、本作でも、シャープ君は運命の苛酷な仕打ちに直面することとなります。ラストの部分では、抑えた筆致ながら、彼の怒りと悲しみがビシビシ伝わってきます。読んでいて小生もツライです。負けるなリチャード、リチャードに幸あれ。皆さんがもしも本書を一読されることがあったなら、是非ともシャープ君への同情と激励をお願いしたいと思います。