見事な逸品
★★★★★
絞首台に吊るされた一人の女性の死を巡って、探偵役も含めて登場人物が右往左往するあたりはヒッチコックが監督した「ハリーの災難」を思い出した。登場人物の会話もユーモアとウイットに富んでいて、読んでいてとても楽しい。ブラックな苦味も感じる。
そんな中で最後の1ひねりが来たと思って「むむ!」と思っていたら、最後のとんでもない一撃がやってきた。
お笑い劇のように仕立てあげているが非常に知的水準の高い作品。
プロットも探偵役の心理描写も見事。
こんな立派な作品が70年弱も紹介されていなかったということに全く持って驚いた。
久々の私的五つ星!
★★★★★
いやーー、面白かった。
最初に犯人が分かる倒叙形式かと思いきや、思いがけない展開で、読者の鼻面を引き回す。
迷探偵ロジャー・シェリンガム同様、読みながら右往左往させられ、最後にもうひとひねり。
さすがバークリー!!と、騙される快感を感じさせてくれました。
1933年、探偵小説黄金期と言われる時代に、ここまでアンチ・迷探偵、アンチ・ミステリというのは驚くべきことかもしれません。
バークリー、これが最初でも全く問題ないと思うので、是非一読をお薦めします。
《ロジャー・シェリンガム》シリーズの第八作
★★★★★
参加者が有名な殺人者か犠牲者のコスプレをするという悪趣味なパーティで、余興として邸
の屋上に絞首台が設置され、藁製の縛り首の女(ジャンピング・ジェニイ)が吊るされていた。
宴が終わる頃、絞首台には人形の代わりに、みんな
から嫌われていたイーナの死体が吊るされていた……。
己の軽率な行動のために、殺人の容疑をかけられてしまう探偵のシェリンガム。
シェリンガムは、自らの無罪を証明するため、証拠を偽造したり、関係者の口裏
合わせまで行うのですが、逆にそうした行為が裏目に出て、ますます、抜き差し
ならない状況に追い詰められてしまうというスラップスティックコメディさながらの
悪循環に陥ることになります(シェリンガムは、「迷探偵」とでも称すべき存在で、
作者にいいように弄ばれる、究極のイジラレ役なのです)。
物語の序盤で犯行の「真相」が提示されるので、読者はシェリンガムの右往左往ぶりを
笑いつつ、余裕を持って読み進めていけるのですが、そこは曲者バークリー、結末では
読者に対し、きっちり《最後の一撃》を決めてくれます。
シェリンガム入門?
★★★★★
ネタを割れないのでアレですが、古典的な「本格」原理主義者だったら歯軋りして怒るような、なんともバークリーらしい作品。解説では「この作品はロジャー・シェリンガム(バークリー作品のシリーズ探偵の一人)入門にうってつけである」とあります。初め目を疑いましたが(バークリーが好きな人ならそうですよねえ)、なるほど、この作品には他のシェリンガムものにない大きな特徴があります。好敵手(というか、互いにワトソン役になる)のモーズビーが出てこないんですね。ちょっと変則的だけど、シェリンガムの人となりは確かに良く判りますよ。
さて、反推理小説としてはともかく、本作には本格としては若干の問題があります。その点は名作『毒入りチョコレート事件』『試行錯誤』で解決されていますから、これを読んで面白いと感じた方はそちらも是非どうぞ。
エンディングのひとひねりと併せて、何とも旨みのあるミステリ
★★★★★
これには、まいった! 通常の犯人探しの探偵小説とは全く違うミステリ小説。ユーモアとウィットの利いたコメディを見ているみたいな趣って言ってもいいかな。本当に面白かった。
名探偵ならぬ迷探偵、ロジャー・シェリンガムが活躍する作品です。あちこちで、「おいおい」とツッコミを入れたくなるシェリンガムの右往左往ぶり、状況をややこしいものにする推理と行動が、とても愉快でしたね。シェリンガムったら、全くとんでもない探偵だよ!
普通の探偵小説とは、全く違う趣向が凝らされています。それは、シチュエーションの風変わりな妙味と、被害者の死をめぐって一致団結する登場人物たちの言動の面白さにあったように思います。二転三転するシェリンガムの推理も愉快でしたし、シェリンガムをはじめ、登場人物たちの奮闘(?)には、「頑張れ〜」と思わず応援したくなったくらい。エンディングのひとひねりと併せて、何とも旨みのあるミステリでしたね。