黒沢清監督のホラーは、つねに一筋縄ではいかない。本作も、その好例だ。郊外の家に引っ越した作家の礼子が、隣の廃墟で、千年前に沼に落ちたという女性のミイラを発見する。まるでミイラに呪われたかのように、不可解な現象に見舞われる礼子。物語の基本はよくあるホラーのパターンだが、ミイラを保管する大学教授・吉岡と礼子らの愛と裏切りのドラマが、ミイラの秘密以上に、先のみえない展開で同時進行していく。
礼子の口から吐き出される泥や、引っ越し先の古びた家の構造など、恐怖を高める要素をボディブローのように効かせながら、突然、それを緩めるような演出が黒沢監督らしい。ミイラにまつわる事象の数々が、怖さと笑い、紙一重のところで描かれるのだ。礼子役の中谷美紀、吉岡役の豊川悦史は、ともに怪しさのなかに、わずかなユーモアも交え、恐怖と隣り合わせになった人間の感情をリアルに表現。ラストシーンの唐突な衝撃も、ほかの映画にはない味わいだ。コアな映画ファン向けの作りだが、そうではない人も、予想を裏切られる快感を得られるはず。(斉藤博昭)
何がやりたいのか分からない
★★☆☆☆
「CURE」で黒沢監督のファンになって以降、ほとんどの作品を見てきたし、事実、ホラーやサスペンスのようなジャンルを撮らせたら、今のところ日本では一番上手いと思うけど、残念ながら今作は期待ハズレ。
「日常の中に潜む非日常」とか、「自然な行動の中の不自然さ」みたいな場面演出は相変わらず巧みだけど、今作は肝心のストーリーや登場人物の描き方が曖昧すぎて意味が分かりにくい。「想像させよう」という狙いが裏目に出ている感じ。
ミイラの存在が顕著だけど、「不可解な謎」の提示と「現実的解釈」のバランスが取れていない。どういう素性のミイラなのかという説明が無いのはまだしも、「怨霊として甦っているのか、それとも妄想か」といった肝心の部分の描き方が中途半端なのが問題。それでいて編集者と考古学教授による「事件」の概要は説明過多。ミイラとの関係性が有りそうで無い、無さそうで有る、という微妙な扱い方。狙ってやっているのだとは思うが…。
他にも、泥を吐く冒頭やミイラの記録映画など、雰囲気だけで消化不良な伏線も多く、色々と解釈して楽しめるほど練られた脚本構成とは言い難い。何よりそれで「ホラーとして怖くなっていない」のが致命的。安達祐実も演技自体は悪くないけど、ホラー女優として出るにはメジャーすぎてミスキャスト。吉岡の「動けるんだったら最初から動け!」というセリフや、死体に驚いて池に落ちる、お約束のような「落ちオチ」、しかも吉岡が落ちたままの終わり方など(中谷美紀がカメラの方を向いて「ダメだこりゃ」と言いそうw)、コントみたいなシーンもあり、より今作の微妙さを増している。
ホラー要素なラブコメ
★★★☆☆
「ドッペルゲンガー」以来3年ぶりのメガホンとなる
黒澤清監督作。
今回もまた難解、不可解な映画を作ってくれましたw
ホラー要素のラブコメディなのでしょうか。
怖いんだけども、笑えたり、ラブシーンが見られたり
します。
相変わらずの観る者を画面に引き込んで離さない
映像美やカット割などの妙で最後まで
飽きさせないのはさすがなのですが
千年前、池に沈んだ女性のミイラというモチーフが
上手く生かされてる感じはやっぱりしないですかねー。
ただ、面白いのは後半
中谷美紀扮する、落ち目の美貌作家が描く
通俗恋愛小説的な世界観の中に、どうも突入していってるんじゃ
ないか、というフシがあるところですね。
後半、取ってつけたような浮いたセリフや
チープなセリフ、行動がドタバタぽく
展開されるんですが、
監督本人が告白してた「苦手な恋愛ジャンル」を
諧謔的に自虐的に自分自身を哂うかのように
確信犯で描いてる感じがしてなりません。
しかし見事、そんな世界にトリップさせてくれた
監督はすごいと思うし
作品のストーリーが破綻すれすれでも
観るべき価値はあったかな、と思ってます。
なんといっていいか
★★☆☆☆
黒沢監督のホラー作品はとても好きで
ほぼ見ています。
ロフトは、公開当時からホラーではないと
聞いてたので見てなかったのですが
最近やっと見ました。
カメラワークとかはコレだよコレって感じで
良かったんですが…
黒沢作品はわりと1シーンをのびのびと撮ってるものが
多いなと思うんですが、これはちょっとのばしすぎかも。
さらに、主演二人とも、大人しい印象のせいか
映画自体がものすごく落ち着いてます。
たんたんと・・どころじゃないです。
さすがに途中途中で眠くなってしまいました。
笑いどころは結構あるんですが・・。
ストーリー進行は一番難解かも。
個人的には、今までの作品と比べると
あまりのめりこめませんでした。
主演二人にも感情移入できませんでしたし・・。
黒沢映画にまだ一度も触れてない方は
別の作品から見るのをお勧めします。
それにしても、大杉さんは黒沢映画常連ですね。出てくると嬉しい。
古典的こそ黒沢映画
★★★★★
ドッペルゲンガー以来の黒沢清監督最新作であり会心作だ。
『ミイラ』という古典的なそして映画的なアプローチがいかにも黒沢映画らしい作品だ。恐怖とは非常に奥深いもので、どちらかというと黒沢映画における恐怖はその存在自体の恐怖を示していると思う。だからこそミイラは襲い掛かってこない。襲い掛かってきたら倒せばよいだけの話だ。倒せないのであれば殺されるだけの話で終わってしまう。身近なことでいうならば家の鍵を閉めたはずなのに帰ってきたら開いていた・・・これが恐怖である。
今から約4年前、僕は『なぜかわからないけどいろんなものがはみ出してくる』という恐怖を描いた映画を作った。ズボンに入れたのにはみ出してくるTシャツ、容器からはみ出してくるプリン、自然とチャックが開いてはみ出してくるイチモツ。
これが恐怖だと僕は考えて作ったのだが、どんな映画祭にも箸にも棒にもひっかからなかった。
僕は今後の人生に恐怖した。
http://www.yoyogicafe.com/
意味が分かりません
★★☆☆☆
黒沢清と坂本順二。
日本映画界の二大巨頭。
常に悪い方に期待を裏切られる。
決して批判することを許されない。後で観なきゃ良かったと後悔する。
結局何がやりたかったのか分からない。
どんなにコケても何故か次回作が撮れてしまう。
でこの映画。
やっぱり何がやりたかったのか分からない。
出身者は理解しているのか?
いっぺん聞いてみたい。
プロデューサーは脚本を理解してたのか?
ただ俺がバカなだけなのか?
見下されてる気がする。
黒沢映画を観た後に共通する不快感。